必読すぎる「荒木飛呂彦の漫画術」
![必読すぎる「荒木飛呂彦の漫画術」](/images/articles/big20230906y7jahv115758434911.jpg)
ストーリーを考える人だけでなく、すべてのプロフェッショナルに捧げたい。
超大人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の作者、荒木飛呂彦の本です。作者の制作方法や考え方を通じて、漫画創作の裏側を紹介しています。みなさんご存知かと思いますが、作者は独特の絵柄やキャラクターデザイン、ストーリーテリングで多くのファンを魅了しています。この本はその創作の秘密や哲学に迫ることができる貴重な一冊です。
これはもう必読です。とくにライターは展開を重視しなくてはならないお仕事でもありますから、学べることは山のようにあります。
この本を手にしたのは、シナリオライターとしてまだ駆け出しだったころです。ジョジョはもちろん読んだことがありましたが、ファンというほどでもない。しかし、この帯に強烈に惹かれたのです。だって、大人気漫画家の「企業秘密」が知れるんですよ? 出版社の思う壺とはこういうことを言うのでしょう(褒めています)。
当時はまだ思うようにストーリーも書けなければ、「面白い」とは一体なんなのか、感じることはできても論理的に説明できませんでした。ストーリー制作に限らず、文章は「読ませてなんぼ」の世界。これは漫画界も同じはず。すぐに購入し帰りの電車のなかで開いたら最後、読み終わるまで寝るわけにはいきませんでした。
漫画術と銘打っているくらいですから、もちろんノウハウはたっぷり入っていますが、この本のポイントは、創作においてのプロセスです。文章は文系のものだと思われがちですが、結局のところ論理的思考が必要なのです。著者が長年の創作活動のなかで培ってきた「技術」を言語化することで、重要なヒントやアプローチを得ることができます。その一端を垣間見ることができるのは、創作者にとって非常に刺激的です。
とくにシナリオライティングをメインにしている私にとっては、キャラクター設定をするうえでも非常に勉強になることが多かったです。掲載されているキャラクター身上調査書を見たときは「まいりました」と思わずつぶやきました。
さらに胸アツなのは、著者の創作に対する「哲学」です。ものづくりへの情熱や信念がこの本にまるごと詰まっており、そこから学べることはお仕事へのモチベーションや意義を再確認する助けになります。
この本に書いてあることはお仕事を担うすべての人に通じるものです。なにをコンセプトにしているのか、誰に届けたいのか、どんな主張をもって挑むのか。漫画制作だけでなく、なにかしら「ものづくり」をしている人はもちろん、お仕事の心構えとして読んでみても、絶対に損はさせません。
大物作家が大集合「ミステリーの書き方」
![大物作家が大集合「ミステリーの書き方」](/images/articles/big20230906rj6fpy115818700981.jpg)
ミステリー作品が大好きです。駆け出しのころは「いつかミステリーを書くんだ!」と息巻いていたのを覚えています。ですが納得のいくミステリーを書けたことはありません。
活躍している作家とはなにかが決定的に違うはず。彼らの頭のなかを覗けないのか。と、探して見つけたのがこの本です。これでもかというほどミステリー作家だけを集め(表紙を見てぎょっとしました)、インタビュー形式で作家たちが執筆作法を披露してくれています。
すべての作家の執筆作法に感銘を受けましたが、とくに驚いたのは宮部みゆき、伊坂幸太郎、北方謙三の大先生たちの記事です。天才すぎてついていけません。北方謙三なんて「推敲はしない」と言い切っています。本気と書いて「マジですか?」と、目をこすりながら何度も読み返してしまったほどです。
この本の一番のポイントは、いろんな作家がいろんな技術を披露してくれているので、理論派・感情派の両視点から文章の書き方を学べることです。テクニックはもちろん、人生論にまで発展する作家たちの情熱には、耳が痛い箇所もある一方で、胸を打たれます。
どんなものを書くにせよ、ライターは読者の興味を惹きながら文章を読ませなければなりません。次の一行をいかに読ませるか、文章をどのようにつなげていくか、という部分においても非常に役立つ本になっていますので、ミステリーに限らず、いつか自分の作品を世に出したい人はもちろん、書くお仕事をしている人にはおすすめの一冊です。
脳がしびれる、吉増剛造の「詩集」
![脳がしびれる、吉増剛造の「詩集」](/images/articles/big20230906hi19ys115850746091.jpg)
60年代に登場した現代最高の詩人、吉増剛造の代表的な詩を集めた一冊です。
言葉にはこれほどのパワーがあるのかと思い知らされる吉増剛造の詩は、体の奥から得体のしれないものが湧きあがってくるような、鮮烈な体験をさせてくれます。
吉増剛造を知ったのはたまたま見ていたNHKの番組でした。「へえ、こんな詩人がいるんだ」となにげなく見ていたのは1分程度。海外の詩人の話になり、本人が朗読した詩について吉増剛造は言ったのです。
「Nightのghが聴こえるような気がする。妖精のようなこのgh……」
ちょっと待ってください正気ですか? 一体なにを言ってるの? でもなんかすごい、こんな言葉の選び方は尋常じゃない。と、即座に著作を検索しぽちっと購入したのがこの本でした。
その番組ですでに感銘どころか震えていたわけですが、活字になっている吉増剛造の詩は破壊力が抜群でした。言葉で表現する、ということにおいての著者の引き出しはもはや宇宙サイズです。この感情を伝えるために、この言葉を選んで、さらにこんな表現を使うのかと目から鱗どころの騒ぎではありません。「ぼくの眼は千の黒点に裂けてしまえ」と叫びたくなる。
本作は「詩集」なのですが、小説的な要素も多く含んでいるので、言葉の選び方、表現方法に迷ったときのヒント(触発)として、活用しています。
言葉をつむいでいくことや、言語が持つ力、その無限の可能性において探求したい人には、超おすすめの一冊です。
この記事を書いたライター
![](/images/writers/small20230927ncbzmf151341451772.jpg)
立石
本業ではゲーム制作のシナリオ・音声収録のディレクションをしつつ、副業ではSEO対策記事、CM脚本、占い鑑定書の執筆など幅広く活動中。ひと仕事を終えた後のお酒は格別。エンタメ関係のお仕事にも挑戦していきたい!