取材には大きく分けて2種類ある
取材という字に着目すると「材料を取る」と考えることができます。料理に例えて考えてみると「材料を取る」には、以下の2種類があるのではないかと思うのです。
- 決めた料理のために材料を取ってくる
- 材料を取ってきてから料理を決める
ライティングに置き換えても同じことが言えます。前者は、ライターや編集者側が記事の内容を考えて、その流れに沿って取材先から言葉を引き出すケースです。Webメディアの取材記事などは、この形式が多いのではないかと思います。
専門家から権威性のある言葉をいただくことで、信ぴょう性の高い記事になります。ただ、取材を受けた専門家は、用意された質問に答えるのがメインで、自分が話したいことを話せるわけではありません。専門家が取材で新たな気づきを得るのは稀でしょう。
一方で、ライターや編集者側で内容を決めずに、取材先にある程度自由に話してもらってから記事を書く手法もあります。経営者や店長の想いを引き出したり、個人の人生ストーリーをまとめるケースがこちらにあたります。
筆者が取材をしていると、多くの人が自分の考えを持っていながらも、整理ができていないことが多いです。取材を通して、考えが整理されると「スッキリした」「まとめてもらってよかった」と感謝の言葉を言っていただけます。取材を経て、自分の深い想いに気がついて生き方が変わったという方もいました。
取材ライターの始め方
では、どうすれば未経験で取材ライターを始められるのでしょうか。
前述した取材ライターのうち、後者のやり方で始めてみるのをおすすめします。私自身が最初にやった取材方法は下記のようなものでした。
- 友人や知人に声をかけて、これまでの人生や、これからの目標を取材する
- 取材した内容を文章にまとめて、本人に渡す
- 許可が得られれば、自分のSNSやブログに掲載し、ポートフォリオにする
- 取材した相手に、ほかに面白そうな話ができる人がいないか紹介を依頼する
- 紹介された人を取材して記事を書く
「そんな簡単にはいかないでしょう」と思う人もいるかもしれません。
ただ、これまでの自分の人生や目標を文章に起こしてもらった経験のある人は少ないです。話を聞くだけでも喜ばれるのに、その内容を文章としてまとめてもらえるのだとしたら嬉しいものですよ。中には、筆者が書いた文章を、自らシェアして宣伝してくれる人もいました。
この方法ではいきなり報酬を得ることは難しいものの、取材の練習、ポートフォリオの作成、人脈の構築といったメリットがあります。お金では得られないものが多く得られるため、最初のステップとしておすすめの方法です。
AIには身につけられない聞く力
決まった質問を行うことはAIにもできるかもしれません。しかし、取材相手に自由に話をしてもらうには、AIにはない「聞く力」を磨く必要があります。実は、筆者は昔から聞く力には自信があり、人の話を聞き出すことは簡単だと考えていた時期があります。
コーチングやカウンセリングを学び、聞くテクニックは抜群だと思っていたのですが、とある書籍との出会いが筆者の考えを覆します。それが、『聞けば叶う わもん入門(薮原 秀樹著・サンクチュアリ出版)』というタイトルの書籍でした。
この書籍にはこれまで学んできた聞き方とは違い、人としての在り方について深く書かれていたのです。例えば、相手の話を聞くときは自分の頭の中を空っぽにして聞く「完全沈黙」や、相手には相手の事情があると尊重する「絶対尊敬」といった内容が書かれています。
もし、取材相手が複数恋愛肯定派だったとして、あなたは否定的にならずに話を聞き続けられますか。複数恋愛に対して少しでも嫌悪感を示すと、相手の心は閉ざされてしまいます。あなたの心情を側において聞き続けられれば、取材相手はより深い話をしてくれるでしょう。
この深い話を聞き出して文章にすることができれば、取材先や読者から喜ばれる記事につながるのです。相手の具体的な話や言葉を引き出すことは、AIには不可能でしょう。今から聞く力を鍛えて、AIには書けないあなた独自の記事にチャレンジしてみてください。
まとめ
Webライターを始めた方のなかには、人とのコミュニケーションが苦手という人もいるでしょう。筆者の経験上、コミュニケーションが苦手という人は「何を話せばいいかわからない」というように、「話す」に目を向けているケースが多いです。
筆者は「聞く」を磨くことができれば、相手から自然と話を引き出し良質なコミュニケーションができると考えています。聞き上手になれば、コミュニケーション力もあがり、良い取材記事にもつながるというわけです。
せっかく人間が持っている「聞く」という能力なのですから、使わないともったいないと筆者は考えます。ましてや取材ライティングは、一般的に単価が高いことが多いです。大きな成果を得るためにも「聞く」を磨いて、取材ライターを目指してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いたライター
にのまえはじめ
パーソナルトレーナー、システムエンジニアなど複数の顔を持つ複業ライター。得意ジャンルはアニメ・漫画、ゲーム、特撮などのサブカルチャー、IT・システム開発関連、インタビュー記事など。クライアントからは「執筆速度の速さ」「斜め上の考...