使われ方の変化は3パターン

使われ方の変化は3パターン

言葉の使われ方の変化は、以下の3パターンに分けられます。

  • 誤用が広まったケース
  • 新しい意味で使われるようになったケース
  • 読み方が変わったケース


それぞれのパターンは異なる性質を持っており、詳しく見ていくことで、その違いが理解できます。それでは、各パターンについて詳しく見ていきましょう。

誤用が広まったケース

誤用が広まったケース

まず紹介するのは、本来とは違う意味や使われ方が広まった言葉です。言葉の認識が違うと、会話や文章の意味が正しく伝わらないことがあります。他の言葉や表現を使った方が、正しく意味が伝わるケースもあるでしょう。

正しい意味で書くのが基本ですが、誤解を防ぐために、どのように誤用されているかを見てみましょう。

役不足

「役不足」の本来の意味は、「本人の能力に対して与えられた役目が軽すぎる」です。

しかし、「本人の能力に対して役目が重すぎる」という意味で、誤用されています。

正用と誤用の例は、以下のとおりです。

  • 正:この簡単な仕事は君には役不足だから、もっと難しい仕事を任せるよ。
  • 誤:このプロジェクトは私には役不足で、うまくやれる自信がありません。


本来は、能力が過小評価されているときに使うものであり、実力が足りないときには使いません。

それでは「役不足」の誤用はどれほど広まっているのでしょうか?

文化庁が行った2012年度の「国語に関する世論調査」では、「役不足」をどの意味で使っているかを調査しました。その結果、次のように示されています。

  • 「本人の力量に対して役目が軽すぎること」と答えた人は41.6%
  • 「本人の力量に対して役目が重すぎること」と答えた人は51.0%


誤った使い方をしている人が51.0%もおり、すでに誤用が広まっています。

以上のように「役不足」は、誤用が広まった代表的なケースです。

誤用すると意味が真逆になってしまうため、ライティングや日常会話での使い方には注意が必要です。

参考:文化庁 平成24年度「国語に関する世論調査」の結果について
参考:ことば食堂へようこそ! | 文化庁 役不足

雨模様

「雨模様」の本来の意味は、「雨が降りそうな様子」です。

しかし、「小雨が降ったりやんだりしている様子」という意味で、誤用されています。

正用と誤用の例は、以下のとおりです。

  • 正:今日の天気は雨模様だから、念のために折りたたみ傘を持っていこう
  • 誤:外は雨模様だから、濡れないように傘を買おう


本来は、雨が降っていない状況で使うものであり、雨が降っている状況では使いません。

このような誤用が広まっていることを示す、調査結果があります。

文化庁が行った2022年度の「国語に関する世論調査」において、「雨模様」をどの意味で使っているかを調査しました。その結果は、以下のとおりです。

  • 「雨が降りそうな様子」と答えた人は37.1%
  • 「小雨が降ったりやんだりしている様子」と答えた人は49.4%


以上のように、誤った意味でとらえている人が49.4%と、誤用が広まっています。ライティングで「雨模様」を使うと、雨が降りそうな天気と伝えたいのに、雨がすでに降っていると捉える読者が一定数存在すると考えられます。

誤解を避けるためには、他の表現や補足描写をすることが大切です。

参考:文化庁 令和4年度「国語に関する世論調査」の結果について
参考:ことば食堂へようこそ! | 文化庁 雨模様

涼しい顔をする

「涼しい顔をする」の本来の意味は、「自分に関係のあることなのに、知らないふりをしている」です。

しかし、「大変な状況でも平気そうにする」という意味で、誤用されています。

正用と誤用の使い方の例は、以下のとおりです。

  • 正:部長のミスを部下が修正しているが、部長は涼しい顔をしている
  • 誤:たくさん仕事を抱えているのに、彼は涼しい顔をしている


本来の意味では、自分に関することを無視する、悪い意味で使う言葉です。大変なのに余裕がある、という意味の褒め言葉としては使いません。

このような誤用は、残念ながら広まっています。

文化庁が行った2022年度の「国語に関する世論調査」において、「涼しい顔をする」をどの意味で使っているかを調査しました。その結果は、以下のとおりです。

  • 「関係があるのに知らんぷりする」と答えた人は22.9%
  • 「大変な状況でも平気そうにする」と答えた人は61.0%


正しい意味で捉えている人が22.9%と少なく、ライティングで使用する際には注意が必要です。

書き手が批判的な意味で「涼しい顔をする」を使っても、読者の多くはほめ言葉として受け取る可能性が高いです。

言いたいことが正しく伝わるように、別の言葉を使うほうが無難でしょう。

参考:文化庁 令和4年度「国語に関する世論調査」の結果について

新しい意味で使われるようになったケース

新しい意味で使われるようになったケース

次に紹介するのは、本来とは異なる、新しい意味や使われ方が広まった言葉です。若者言葉や流行語のような性質を持つものが含まれます。

うまく使いこなせれば、若い層がターゲットの場合に、親近感を抱かせることができるでしょう。新しい意味がどのように広まっているのか、確認してみましょう。

引く

「引く」という言葉は、多様な意味・使われ方があります。

「モノを自分の方に寄せる・何かを操る・線上に広げる」などの意味・使われ方です。

具体的には、「網を引く・犬を引いて散歩する・線を引く」などが当てはまります。

これらの意味に加え、近年では「異様だと感じるモノ・人・できごと」に対する感想としても、新しく使われるようになりました。

「そこまで本気になることに引くわ」や「ドン引き」などの使われ方です。

このような新しい使い方は、若い世代が中心です。文化庁が行った2022年度「国語に関する世論調査」では、新しい意味での使い方をする人が70%ほどいるという調査結果が出ています。

特に、20代から40代では90%を超えており、広く浸透していることがうかがえます。文語で使う機会は少ないですが、会話文で気をつけたい使い方です。

若者の会話を書く際に使えば、リアリティが出ます。しかし、掲載サイトや内容的に相応しいか、考慮する必要はあります。

参考:文化庁 令和4年度「国語に関する世論調査」の結果について

推し

「推し」という言葉は、「人やモノを勧める・評価や応援したい対象として挙げる行為」を指します。例えば「部長はA案を推している」といった使い方です。

これらの意味に加え、近年では「応援している人物やモノそのもの」を指す、新しい使われ方をしています。

「推しのライブに行きたい」や「このキャラが推しなんです」などの使われ方です。 

もともとは、アイドルグループ内の応援している人物を「自分のイチ推しメンバー」という表現をしていました。それが「推しメン」に短縮され、さらに短縮され「推し」になったとされます。

このような新しい使い方は、若い世代が中心です。文化庁の行った2022年度「国語に関する世論調査」では、新しい意味で49.8%の人が使用しているとされます。16歳から19歳の使用率が最も高く、87.6%が使用しています。

ライティングでは、サブカル系の記事を執筆する際に使うことが多いです。推し活や推しグッズなどの言葉も生まれており、これからも新たな使われ方をする可能性

参考:文化庁 令和4年度「国語に関する世論調査」の結果について

読み方が変わったケース

読み方が変わったケース

最後に紹介するのは、本来の読み方とは、異なる読み方が広まった言葉です。主に会話の際に注意が必要です。

正しい読み方を使うことで、会議や打ち合わせなどにおいて、信頼を得られる可能性があります。また、PCを使ったライティングにおいても、正しい漢字変換を行うために注意が必要です。

読み方が変わった言葉を、確認してみましょう。

早急

「早急」という漢字は、本来「さっきゅう」と読みます。

「そうきゅう」という読み方は、もともと間違いでした。

しかし、誤った読み方である「そうきゅう」という読み方が広まり、今はこの読み方も間違いではなくなりました。

どれほど広まっているかを示す、調査結果があります。

文化庁が行った2003年度「国語に関する世論調査」では、「早急」を何と読むか調査しています。その結果は以下のとおりです。

  • さっきゅう:21.2%
  • そうきゅう:74.5%


今では「そうきゅう」という読み方は、辞書にも併記されています。

PCやスマートフォンの変換でも問題なく使用でき、ライティングではあまり気にする必要はありません。しかし、オンライン会議や打ち合わせで、正しい読みを使えば、信頼につながる可能性があります。

参考:平成15年度「国語に関する世論調査」の結果について | 文化庁

捏造

「捏造」という漢字は、本来「でつぞう」と読みます。 

「ねつぞう」という読み方は、もともと誤りでした。

しかし「ねつぞう」という読み方が広まり、「でつぞう」で通じることは少なくなってきています。

ライティングにおける影響として、「でつぞう」と打っても変換できない可能性があります。筆者のPCでは、「でつぞう」では変換できませんでした。

現在では「ねつ造」と書くケースもあり、ライティングでは注意が必要です。レギュレーションの確認や、「ねつ造」と書くことをおすすめします。

参考:余録:「ねつぞう」は慣用読みで本来は… | 毎日新聞

まとめ

ここまで、使われ方が変化した言葉を見てきました。

言葉というものは、変化しています。確かに、正しい使い方をすることは大切です。しかし、シチュエーションや相手によっては、言いたいことが伝わらないことがあります。

変化する言葉とうまく付き合い、言いたいことが伝わる文章の執筆を意識しましょう。

この記事を書いたライター

執筆者

水木ゆう

フリーランスのWebライターです。自身でネットショップを運営していた際に、ブログを執筆したことでライティングに興味を持ちました。得意なジャンルは「歴史」「アニメ」「ゲーム」「観光」などです。また、ナレーターの勉強をしていた経験があ...

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