特別支援学校で忙しく働く日々のなかで
わたしは、障害のある子どもと関わったことをきっかけに教員免許を取得し、特別支援学校で教員として勤務することになりました。
特別支援学校は、小学校や中学校、高校などと違い、あまりなじみがない方も多いかもしれません。特別支援学校では、小学部から高等部まで1つの校舎で学ぶ場合が多く、1つの学校に100人近くの先生が在籍している場合もあります。また、遠くから通う生徒のために寄宿舎がある学校もあります。
勤務したばかりのときは戸惑うことがたくさんありましたが、周りの先生方に教えてもらいながら少しずつ仕事を覚えていきました。
仕事は忙しく大変でしたが、障害のある子どもたちと関わる生活は楽しかったです。しかし、その一方で「本当に自分は教員に向いているのか」といつも自問自答を繰り返していました。
というのも、まわりの先生方は、明るく積極的な先生たちが多かったからです。もともとおとなしく人前にでるのが苦手な性格がわたしのコンプレックスでした。
先生方にも「さきの先生はおとなしいからなあ」「もっと前に出てもいいんだよ」と言われるたびに苦笑いし、やっぱり自分は教員には向いていないんだろうなと勝手に落ち込んでいました。
教員3年目、素敵な先生と出会う
そんな中、教員生活も3年目を迎えようとしていました。
わたしは、別の特別支援学校に異動になりました。新しく赴任した学校では、重複障害学級の副担任になりました。一緒に働くことになった担任のK先生は、とても穏やかな40代くらいの女性の先生でした。育児休暇に入る先生の代わりに、年度途中から入ってきた私をあたたかく迎えてくれてほっとしたのを今でも覚えています。
ある日、K先生といつものように和やかに会話をしていたときでした。
日頃あまり悩みや愚痴をこぼすタイプではなかったのですが、思わずこんな言葉が口をついて出ました。
「わたしは本当は教員に向いてないなって思っているんです。まわりは明るくて元気な先生が多いけど、わたしはおとなしいし、人前に出るのも苦手だし……。」
その言葉を聞いたK先生は、私の顔をそっと見つめて少し間をおいてからこう答えたのです。
「それは気にすることないと思うよ。それはあなたのカラーだから」
それはあなたのカラーだから
その言葉をかけられたとき私の心は「へ?」となりました。思いがけない言葉をかけられきょとんとしているわたしに、続けてこう言ってくれたのです。
「わたしはあなたの穏やかであたたかい雰囲気は特別支援学校に向いていると思うよ」と。
今までそんな風に考えたことがなくてびっくりしましたがとても嬉しかったです。
それまでのコンプレックスがすっと消えていき、「自分は自分、自分のカラーを出していこう」と前向きに考えるようになりました。
わたしがその学校を離れるときも、いただいたメッセージカードには「自分のカラーを大切にがんばってください」と記されていました。その言葉に支えられてその後も特別支援学校に勤務でき、たくさんの子どもたちの笑顔に出会えました。
自分のカラーを大切に生きていきたい
「自分のカラーを大切に」それは仕事が変わった今でも大切にしている言葉です。
わたしは現在、副業でライターの仕事をしています。ライターの仕事を始めてから、今まで以上に文章を読み書きする機会が増え、実際に書き手に会う機会にも恵まれるようになりました。実際に書いた本人に会うと、文章にも書き手の人となりや価値観がにじみでてくるのだなとありありと感じます。
文章の上達法として上手な文章を模写する方法がよく紹介されています。模写をしていると似た文章しか書けなくなってしまうのではないかと不安になる方もいるようですが、実際は、いくら真似してもどこからか自分のカラーは出てきてしまうと聞きます。それくらい自分のカラーは抑えようと思っても抑えられないものでもあるのだなと感じています。
自分が持ってうまれたものは変えられないのであれば、良くも悪くもそれを自分の個性として受け止めうまく付き合っていくしかないのでしょう。
これからもいただいた言葉を胸に自分のカラーを大切にしていきたいです。
この記事を書いたライター
さきのめぐみ
小学校で支援員をしながら副業でライターとしても活動中。フリーターから通信制大学に入学し教員免許を取得。特別支援学校の教員として働いていました。子どもの頃から書くことが好きで、現代詩やシナリオも書いています。人の心がほっとあたた...