オノマトペとは
オノマトペとは、音や状態を表現する言葉です。オノマトペは、読者の感覚に直接訴えかけるため、読者との心理的な距離を縮める力を持っています。
日本語のオノマトペは非常に多彩で、感情や動作、状態を細かく描写できる点が特徴です。日本語のオノマトペは、約4,500語が辞典に載っており、実際には1万語近くあるとされています。この数は英語の1,000〜1,500語、フランス語の600語程度と比べても圧倒的に豊富です。
この豊富なオノマトペを活用すると、文章の表現力や臨場感を大いに高められます。例えば、以下の3つの文を比べてみましょう。
- 「鳥が羽ばたいている」
- 「鳥がバサバサと羽ばたいている」
- 「鳥がパタパタと羽ばたいている」
1つ目の文章では、鳥が羽ばたいていることがわかるだけです。しかし2つ目の文章では大きな鳥が、3つ目の文章では小さな鳥が羽ばたいている、と感じたのではないでしょうか?
オノマトペを使うと、状態や情景を細かく描写できるのです。
また、オノマトペは、感情や視線のニュアンスも詳細に伝えられます。例えば「ちらちら見る」であれば、注意を引こうとするがあまり堂々とは見ない、恥ずかしい気持ちや不安な様子を示しています。また「ギロリとにらむ」であえれば、鋭く冷たい視線で相手を見つめる場面を、より強い印象で伝えられるでしょう。
参考:聞いてビックリ! “オノマトペ(擬音語や擬態語)”の知られざる底力とは?|読むらじる。|NHKラジオ らじる★らじる
オノマトペの種類
オノマトペは、擬音語と擬態語の2つに分けられます。
それぞれの特徴を紹介しましょう。
擬音語
擬音語とは、動物の鳴き声や物体の音など、聞こえる音や声をそのまま表現したものです。
特徴として、多くが「声や音」、「物・人・動物の動きや様子」を表しています。代表的な使い方は以下の通りです。
- 犬がワンワンと鳴く
- 雨がザーザーと降っている
- 引っ越しの荷物をドスンと降ろした
- インターホンがピンポンと鳴った
擬音語は聞こえる音や声をそのまま言葉にしているため、読者はまるでその場にいるかのような、臨場感を味わえます。読者の五感を刺激し、より深く情景に引き込む力を持ち、特に描写を強調したいシーンや臨場感を必要とする場面で効果的です。
擬態語
擬態語とは、動物の鳴き声や物体の音など、聞こえる音や声をそのまま表現したものです。
特徴として、多くが「声や音」、「物・人・動物の動きや様子」を表しています。代表的な使い方は以下の通りです。
- シーンと静かな部屋
- 緊張で胸がドキドキする
- キラキラと光っている
- どんどん進む
- 昼寝をしながらゴロゴロしていた
擬態語は、人や物の動きや様子、さらには人の感覚や気持ちを表すのが得意です。感情や視覚的・感覚的な情報を、簡潔でイメージしやすい形で伝えられます。そのため、読者に情景や風景、あるいは感情を伝えたい際に効果的です。
※擬音語をさらに擬声語に分けて「擬音語、擬態語、擬声語」の3種類、あるいは「擬音語、擬態語、擬声語、擬容語、擬情語」の5種類に分類する説もあります。
ライティングにおけるオノマトペの効果的な使用場面
オノマトペは、ブログ記事やセールスライティング、シナリオやインタビュー記事などのさまざまなジャンルで効果を発揮します。
しかし、ライティングの種類ごとに、効果的なオノマトペの使い方は異なります。ライティングのスタイルや目的がさまざまなためです。ここでは代表的な3つのライティングの種類において、オノマトペを有効に活用する方法とその効果を詳しく見ていきましょう。
セールスライティング
商品やサービスの購入を促す文章を書くセールスライティングにおいて、オノマトペは商品の魅力を引き出し、購買意欲を高めるため非常に効果的です。視覚や触覚などの五感に訴える表現ができるため、商品の特徴や使用感を直感的に伝えられ、商品の魅力を紹介する際に有効なのです。
例えば、枕や布団を紹介する際に「ふわふわ」や「ふんわり」を使うと、柔らかさや心地よさを想像させます。また、食品を紹介する際に「プリプリ」や「シャキシャキ」を使うと、食品の新鮮さや弾力を感じさせます。
こうした表現を文章に組み込むとユーザーが商品の使用シーンを具体的に思い描けるため、商品への興味を引くことが可能です。
さらに、オノマトペは本文だけでなく、タイトルや見出しでの使用も効果的です。響きやリズムが印象に残りやすく、商品の特徴を強く印象づけられ、記事への関心を高められます。
シナリオ・小説
シナリオや小説において、オノマトペは文章にリズムと臨場感を与えます。少ない文字数で状況を伝えられ、かつ、読者を物語の世界に引き込む効果があります。シナリオにおいては特に、感情や心の動きを表現する場面に有効です。以下に例とその効果を紹介します。
●「友人の何気ない一言にモヤモヤした気持ちが消えない」
効果:心の中でくすぶる感情が読者に伝わります。
●「友達からの面白いメッセージを思い出して、ニヤニヤしてしまった」
効果:自然に湧き上がる喜びや微笑みを表現できます。
●「好きな人から優しい言葉をかけられて、胸がキュンとした」
効果:心の高鳴りや、ときめきを的確に伝えられます。
このようにオノマトペを使うことで、登場人物の心情を直接的かつ生き生きと描写できます。
また、動作や環境描写でもオノマトペは効果的です。オノマトペを使うと、読者の五感を刺激し、作品に没入させます。以下に例とその効果を紹介します。
●「ドアがバタンと閉まり、静寂が部屋を包む」
効果:一瞬の音とその後の静けさを際立たせます。
●「砂利道をザクザクと歩く音が、夜の闇に響いた」
効果:足音の質感が情景をよりリアルに描写できます。
●「雨がシトシトと降り続き、地面は水たまりでいっぱいになった」
効果:静かに降る雨の様子を視覚的に伝えられます。
オノマトペは読者の感覚や感情に直接訴えかけるため、効果的に使うと物語全体の印象をより鮮明で臨場感あふれるものにできます。
インタビュー・取材記事
インタビューや取材記事では、取材相手のオリジナルな魅力を生き生きと伝えるために、オノマトペは有効です。
オノマトペを使うことで、相手の言葉や振る舞いから感じ取れる雰囲気や人柄を、読者により直感的に伝えられるのです。
例えば、「何度もニコニコと笑った」と描写すると、楽しそうな様子や明るい人柄が際立ちます。また、「ドキドキした様子で話してくれた」と表現すると、緊張感や真剣さを伝えられます。このようにオノマトペを用いると、インタビューや取材内容だけでは伝わりにくい、相手の人柄や雰囲気を伝えられるのです。
またオノマトペを使うと、話し言葉をそのまま書き起こすだけでは伝わりにくい、感情やニュアンスも表現できます。例えば「ざっくばらんに語る」「きっぱりと言う」などを使うと、会話のトーンや取材相手の意思がより明確に読者へ伝わります。
オノマトペを活用すると、記事全体に親近感が湧き、取材相手の魅力をより効果的に引き出せます。読者にとって、印象に残る魅力的な記事となるでしょう。
オノマトペの注意点
オノマトペは文章の表現を豊かにする、有効な手段です。しかし、注意すべき点が3つ存在します。それぞれの注意点を詳しく紹介します。
ターゲット層や媒体を考慮する
1つ目は、ターゲット層や媒体など、使い所を考慮することです。オノマトペは軽い印象を与える場合があり、文章全体の信頼性を損なう恐れがあります。特に、保険・法律・学術的な文章では、オノマトペの使用を避けたほうが無難です。
文章の性質や目的に応じた表現選びが大切です。
過度な使用は避ける
2つ目は、過度な使用は避けることです。オノマトペを多用すると、文章が稚拙に見え、読者に不快感や読みにくさを感じさせる場合があります。以下はオノマトペの多用による悪い例です。
「会場はワイワイとにぎやかで、パチパチと拍手の音が鳴り響き、ヒソヒソとささやき声が聞こえていた」
この文章では、オノマトペが多すぎて、逆に状況がわかりにくくなっています。過度な使用は感情的な印象を強くし、文章の説得力や客観性を失わせることもあるため、適度な使用が大切です。
意味の受け取り方が異なる場合がある
3つ目は、オノマトペの意味は人によって感じ方が異なる場合もあり、意図が正しく伝わらないリスクがあることです。
例えば「ドキドキ」は心臓の高鳴りを示しますが、ある人にとっては緊張や不安を意味し、別の人には興奮や楽しさを表したりもします。文脈によって「ドキドキ」の意味が異なり、読者がどのように受け取るか、配慮することが大切です。情報を正確に伝えることが求められるライティングでは、オノマトペの使用は控えめにしましょう。
まとめ
ここまで、オノマトペの効果的な使い方と、注意点を紹介しました。オノマトペは短い言葉で、状況や感情を伝えられる表現です。
しかし、過度な使用や不適切な媒体での使用は、読みにくさや不快感を与えます。適切な場所で、適度な量を心がけて使うのが、オノマトペを効果的に活用するコツです。効果的にオノマトペを使い、ライティング力を高めましょう。
この記事を書いたライター
水木ゆう
フリーランスのWebライターです。自身でネットショップを運営していた際に、ブログを執筆したことでライティングに興味を持ちました。得意なジャンルは「歴史」「アニメ」「ゲーム」「観光」などです。また、ナレーターの勉強をしていた経験があ...