原稿と記事の違い

原稿と記事の違い

Webメディアの編集者になって意識するようになったのが、「原稿」と「記事」の違い。MojiギルドのようなWebメディアでは、以下のように考えられるのではないでしょうか。

原稿…ライターが書いた文章

記事…読者に読まれるコンテンツ

シンプルにいうと、原稿を読者に読まれるコンテンツにすることが、編集者の仕事です。

編集者の仕事は、企画、ライターへの依頼、取材のアポイントメント、記事公開スケジュールや予算の管理など多岐にわたりますが、今回はライターの原稿を確認する部分についての話になります。

原稿を目の前にして何を感じているのか

原稿を目の前にして何を感じているのか

まずは、ライターの原稿を私がどんな風に確認しているのか、無意識にやっていることも含めて振り返ってみます。

Mojiギルドライターに原稿執筆を依頼する際には、編集部から「テーマ」を提示します。このテーマは、ライターのためになったり、共感できたりする記事を目指して決めています。例えば、

・ライター初心者さんのための、仕事の探し方

・仕事の合間の休憩の取り方

など、ライターの仕事についてや、「他のライターってどうしているんだろう?」に応えるような内容ですね。Mojiギルドライターからテーマを提案してもらい、採用して依頼することもあります。ライターから原稿が上がってきたら、最初の読者は編集者です。

原稿のテキストファイルを開いて「さあ!読むぞ」…じゃないんですね〜。まず、原稿全体を始めから終わりまでさーっと眺めます。

当然ですが「原稿を執筆する」と言うもののもちろん手書きではなく、原稿はGoogleドキュメントなどに入力されたテキストデータです。Mojiギルドの原稿執筆のレギュレーションに沿って原稿作成をお願いしています。だから原稿は画一的なものだと思いますでしょ?

でも、原稿の作り方、というか、体裁はライターによって千差万別。本当に個性が出るんです。タイトルや見出しの入れ方、フォントの大きさ、行間、段落の分け方、文字数…ここにそのライターさんらしさがあふれちゃっているんです。まずこれを楽しんでいます(なんか気持ち悪い?)。

原稿確認は何をしている?

原稿確認は何をしている?

全体を眺めた後には、以下について確認していきます。

・文字数
・誤字脱字
・事実確認(固有名詞・数字・出典・参照)
・段落調整(Webサイトに記事が公開された際に読みづらくないか)
・文法(読みづらい、わかりにくなっていないか)
・表現(読者に誤解を与えないか、メディアとしてふさわしいか)

上記を意識しつつ原稿を読みながら確認を行い、必要があれば修正します。ここで大切にしていることは2つあります。

1.読者目線であること

誤字脱字や事実確認のチェックで間違いがあれば、修正していけばいいのですが、文法や表現チェックに関しては注意深く行っています。なぜなら、ライターの個性や「味わい」が出るところで、編集者の主観でなんとなく修正してしてしまうとそれが消えてしまうからです。

そのため、読者目線で読んで「ん?」と読むのが止まってしまうような、わかりづらい表現であれば修正しますし、「ここをもっと知りたいな」と思えば、追記をお願いすることもあります。

Mojiギルドライターの記事は、ライター自身の想いや経験を文章にして、そのライターらしさを表現してもらいたいので、ここはブレないようにしています。

2.ライターに原稿のフィードバックをすること

もう一つは「修正は履歴を残してライターに共有する」ということです。

メディアによっては、ライターの原稿は初校を納めたまま納品完了となり、その後原稿がどのように修正されたり編集されたりしているのかわからない、というケースも多いと思います。ただ、Mojiギルドは「ライターの、ライターによる、ライターのためのメディア」なので、原稿に対してのフィードバックは、どんなに些細なことであってもしていきたい、と考えています。

「良い原稿」ってなんなの?教えてもらったこと

「良い原稿」ってなんなの?教えてもらったこと

Mojiギルドライターの皆さんは、経験も得意分野も違うので、原稿のクオリティには差があります。駆け出しライターさんには、たくさん修正をお願いすることもあります。

原稿確認は、編集者として当然行うべき仕事ですが、「私って人の文章を添削する資格あるのか…?」「良い原稿ってなんなんだ…?」と迷いが出た時がありました。

そんな漠然とした想いを、私が駆け出し編集者の時代にお世話になった先輩編集者(でありライター)に先日ぽろっと話してみたんです。こんな感じの、本当に漠然としたことを話していたと思います。

「ライターさんの原稿に対して、これが良い原稿だ、と自分が目指すところがないと、書いてくれた原稿を確認したり判断したりすることってとても難しいことのように思います…(けどそれってなんでしょうモヤモヤ)」

先輩編集者がそれを聞いて、うーん、少しと考えてから

ライターがその原稿で何を伝えたいか、がしっかり書いてあるのが良い原稿。それがきちんと伝わるようにすることが編集なんじゃない?それが伝わらなければ、修正してもらえばいいし」

とおっしゃったのです。それを聞いた時「あああ!そうか!」と腑に落ちました。編集者としては基本かもしれないですが、感覚的にしかわからなかったことを言語化してもらえたような、そんなスッキリした気持ちになったのでした。

そうかそうか、だから、誤字脱字があっても、多少文法がおかしくても、「良い原稿」ってあるんだな、と。

だから私は編集者として、テーマに対してライターが伝えたいことがしっかりと書いてあり、それが読者に伝わるかどうかを最重要とすればいい。もし、読者に伝わらない状態になっていたら、一緒に修正をしていけばよい、「良い記事」を一緒につくればいい。

そんなWebメディア編集者としての軸が見えたと思えました。

心が動く記事を届けたい

心が動く記事を届けたい

読む人の心が動く記事を届けたい、ということにおいて、ライターと編集者の想いは同じ。だから、編集者は原稿で伝えたいことがぶれてしまったり、内容が足りないと思ったときには、それをライターにしっかりフィードバックする必要があります。そして、フィードバックするときには、伝えたいことがどのようにぶれているのか、何が足りないのか、を具体的に伝えることを大切にしていきたいです。

私自身も1人のライターとして、こういったフィードバックがあれば、自分のライティング力を上げることにもつながるし、より良い原稿に、そして読者にとってよい記事になると実感できると思えますしね。

ライターと編集者と、一緒に原稿をブラッシュアップしていくことで、心が動く記事を届けていきたいです

この記事を書いたライター

執筆者

坂本 緑

旅行ガイドブックの編集・ライター、コピーライターを経て、フリーライターに。現在は、Webメディアの編集・記事執筆のほか、コピーライターとしてWeb・紙媒体問わず広告制作に携わる。一番好きなのは出会いがある取材とインタビュー。Mojiギル...

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