気づいたらコピーライターと言われてました
新卒で動画プラットフォームを運営する事業会社に入り、デジタルマーケティングにおけるクリエイティブディレクターとコピーライターをしていました。
美術系の学校に通っていたわけでもなく、何かスキルがあったわけではありません。チーム内にできる人がいなかったので私が担当することになり、気づいたらそんな肩書きが後から付いていました。ですが世間がイメージするようなコピーライターとはちょっと違うといいますか、もう少し泥臭いことをやっていました。
私が担当していたのはWeb広告やSNSでのコピーライティングです。この仕事は「かっこいいキャッチーコピーを書くこと」ではありません。ネットの海に漂う無数の人間に対し、言葉で振り向いてもらうために、あらゆる手段を尽くすのが私の仕事でした。
コピーライティングとは
そもそもコピーライティングとはなんでしょうか。
世の中にはたくさんの言葉が溢れていますね。テレビCM、大型ビジョンなどの屋外広告、SNS広告、新聞や雑誌、折り込みチラシ、お店のポップアップに本やCDの帯など。
周りを見渡すと、私たちは常に言葉に囲まれて生きています。そういった言葉のほとんどが広告です。誰かがお金を払ってメッセージを掲載し、私たちはそれを常に浴びています。その言葉=広告によって感情や行動を無意識に引き出されています。
コピーとは「人を動かすためのトリガー」だと私は解釈しています。となるとコピーライターの仕事は「言葉を使って人を動かす」ということになるわけです。
先ほども述べましたが、街中のあらゆるものが人々の関心を引こうと必死に訴えかけています。コピーライティングを通して人々にその商品やブランドに対し、注目してもらう、思い出してもらう、手に取ってもらう、買ってもらう、好きになってもらう、大事にしてもらうための誘い文句なのです。
コピーにはたくさんの種類がありますが、CMなどで使われるブランドのキャッチコピーは最もイメージしやすいコピーライティングの1つではないでしょうか。それ以外にも私たちは、無意識にたくさんの種類のコピーに触れています。
わかりやすい例で言うと「期間限定!」「先着○○名様!」なども立派なコピーライティングです。この文言を見てついつい買ってしまったことがあるのではないでしょうか?
SNS時代におけるコピーライティング
SNSやネット広告がメインとなっている昨今において、コピーにおける大切な要素が2つあります。
1 「親近感」
2「検証から答えを見つける」
この2つだと私は考えています。
※広告において、大切なポイントは3つなどの奇数で出した方が反応が良かったりもするのですが、この記事ではあくまでシンプルに伝えられればと思います。
1 「親近感」
まず1について。最近の人は以前にも増して広告を避ける傾向にあります。なので極力広告っぽさを無くすことがユーザーの警戒心を解くカギになります。
スマホ登場の前は、プロがTVや雑誌などのコンテンツを作ってきました。我々が目にするコンテンツはすべてプロが作ったもので占められます。しかしSNSの発達により個人がコンテンツを発信するようになりました。当然目にするコンテンツは個人が作ったコンテンツが増えてきます。
そうなるとコンテンツの中に差し込まれる広告の形も変化していきます。SNSは個人が作ったコンテンツが多いため、広告の見え方もより親近感のあるほうがユーザーにとって受け入れやすくなっています。
近年インフルエンサーマーケティングなどが大きな手段として確立しているのも、私たちがよく目にするコンテンツに近い形で、広告を出す方が効果が良いという事実に基づいていると思います。
コンテンツが変化すると広告も変化し、それに伴いコピーも変化していきます。TVなどでは一方通行の強い訴求やメッセージでも成り立っていましたが、現在においては親近感のある言葉や、相手からの反応を引き出すようなコピーの方が、視聴者からの反応が良いケースが多いです。
たとえばX(Twitter)の広告などで、リプライを多く貰うために、公式アカウントなのにくだけた言葉遣いをするケースや、画像で大喜利要素を入れ込むなど、ユーザーと同じ目線でコミュニケーションをとる事で、成果の向上につながることが多々あります。「え、それ公式がやるの?」のようなコピーの方がウケが良かったりもするのです。
2「検証から答えを見つける」
そして2つめ。検証です。
TV CMや新聞広告、雑誌などの広告は視聴者からの反応がわかりにくい。反応の計測がしにくく、数値として追うことが難しいです。このコピーは良かったんだっけ?という判断がしにくい状態でした。
一方でSNSやWeb広告はユーザーの反応がダイレクトに見られるので、何がよくて悪いのかが、はっきりと数字で捉えることができます。このコピーはクリックされるけど、その先まで行動してくれない。このコピーはいいねが多いなど、細かく見られることが大きな違いです。
今まで決め打ちで世に出さなければいけなかったCMなどのコピーとは違い、コピー案をとりあえず100個作り、Web上で配信して反応が良いものだけを残すことができます。
残った良いコピーの冒頭10文字違いを10パターン用意し、ユーザーが一番動いてくれる「勝ちコピーの型」を検証し見つけ出すことができるのです。
そんな時代のコピー作り
最初から良いコピーを作らなくても勝てるのがWeb広告やSNSにおけるコピーライティングの面白いところです。ただし闇雲に垂れ流すのは時間がもったいないので、ある程度の狙いは定めていくことが重要になってきます。
私がコピーを作る時にやっていたのが「Twitterでバズっていたツイートを研究する」でした。万バズしているツイートは「わかりやすい正解」なんです。個人が生み出すコンテンツの最高峰。人々に面白がられて広がっていくSNS時代のコミュニケーションの正解が、バズった投稿でした。
万バズした過去投稿を何本も比較し、共通項を見出したら、それを元に訴求ポイントを入れ込んでいきます。ここでコピーの正解を出す必要はないので、訴求に強弱をつけたり、言葉遣いを固いものからくだけたものまで用意し、検証を重ねていくことが重要です。
もう1つは「自然体の言葉を使う」こと。明らかに人の注意を引くような強引な言葉だったり、綺麗すぎて硬い言葉というのは、実際のマーケティングにおいて効果が芳しくありませんでした(もちろん商材にもよりますが...!)。
それよりもちょっと崩した言葉などを織り交ぜることによって、広告臭を弱め親近感を出すことで効果が良かったことがいくつもありました。「見てくれ見てくれ!」のような一方通行のコミュニケーションよりも、ちょっと謙虚で自然な方がユーザーは振り向いてくれます。
これはトレーニング的な側面が強いですが、私がよくやっていたのが、「友人との会話の中でコピーを探す」ことです。何気ない会話の中でも、人って意外と良いことを言っていたり、心に響く言葉を述べていたりします。これに気づけるようになると、言葉に対するアンテナを鍛えることができるのでおすすめです。
何もないところからコピーを生み出すのも立派ですが、日常に埋もれてしまいがちな宝石のような言葉を見つけて磨くことも、コピーライターとしての立派な仕事の1つだと思っています。
言葉で人を動かすのなら、それは立派なコピーライターだ!
なにも、面白い言い回しや言葉遊びができなくてもコピーライターになることはできます。自分が考え抜いた言葉によってモノが売れたり、ユーザーが狙っていた行動をしてくれた時は、やはりこの仕事の楽しさを実感する瞬間です。
結局のところ、コピーはコミュニケーションだと考えれば、より身近なものになるのではないでしょうか。画面の向こうの相手を想像して、振り向いてもらうためにどんな言葉が良いかなとひたすらに考え抜くのが、難しくもあり楽しいところでもあります。
誰かと打ち解けるのがすごく得意な人は、そのコミュ力を言葉に置き換えて良いコピーが書けるかもしれないですし、相手のことを伺いすぎて内気で話すのが苦手な人でも、その考えの深さから、相手に伝わる最高のコピーを作ることができるかもしれません。
この仕事の良いところは相手のことを考えれば考えるほど、成果につながる点だと私は思います。
この記事を書いたライター
あんどりゅー
副業ライター。本業はマーケティング畑の人。中学生からつけていた日記が700件目を超え、「あれ、もしや文章書くの好きなのでは?」とようやく気づきライターの道へ。現在はジャンル問わず挑戦中。ごく稀に音楽ライター。自然と音楽と乗り物が大...