クライアントからの、「仕事がなくなる前兆」はある

クライアントからの、「仕事がなくなる前兆」はある

(イメージ)くそぅ、ここまでがんばったのに…と思うことは一度や二度じゃなく、そのうち雰囲気で察するようになる

────兵藤さんって、ここまで何度も打ち切られたり干されたりって聞いてますが?

いきなり人聞きが悪いことを言わんでください(笑)。

そりゃ確かに、中にはウマが合わずに短期間でお付き合いの終わるクライアント様もいますが、どっちかといえば「テスト的に使ってもらって、需要と合わなかった」くらいの話です。

それ以外だと、いろいろな事情がありますからね…それなりに長い関係が続いたあと、クライアント様の方で事業の継続を打ち切ったり、ライターに委託するより提携しているどこかからの記事配信で十分という、経営判断が多いと思います。

────いずれにせよ、ライターとしてはお仕事がなくなるわけですが、そういう前兆って何かありますか?

そうですね、経営者が直接編集部を仕切るってパターンは少ないですし、何かある時は編集部そのものも寝耳に水ってこともありますが、「前兆」って意味だとパターンは似てきます。

────本業が別にあって、副業でお小遣い稼ぎ程度っていうライターならともかく、本業ライターで生活がかかっているとなると、そういった「危機管理の嗅覚」は参考になる話ですから、よければ具体的にどんな「前兆」があるのか、お話いただければ。

わかりやすいのは、以下のような場合ですね。

  • 業務連絡に使っていたチャットで、返信が極端に遅くなる。
  • 担当者が突然変わるだけならともかく、その理由がよくわからない。
  • 定期的に発注されていた案件のペースや発注量が減る。
  • 方向性の異なる記事制作を要求されたかと思えば、取り消されるなど方針に一貫性がなくなる。
  • 時間や手間、心理的な面でライターの負担が大きい発注に切り替えられる。


なんのことはない、「恋人に振られる時あるある」と、似たような事が起きます

ライターと距離をおきたい、できることならライターの方からお付き合いを辞退したり、なんとなく自然消滅するような方向へ持っていきたい…という雰囲気を感じたら、もう先は長くありません。

もちろん恋愛と違って生活かかってるライターとしては、ギリギリまで受注できる体制を維持するんですが、並行して最悪のケースも想定するべきです。

それまでのクライアント様に感謝して、次のステップへGO!

それまでのクライアント様に感謝して、次のステップへGO!

ライターの仕事が激減してパン工場でしのいでいた頃、「毎日のように朝日を拝んで帰るなんて、この仕事も悪くない」なんて考えたものだ

────うわぁ…その前兆を察した時の心理的ダメージって、でかくありません?

何度か繰り返してると慣れますが、「ついにここでも、来るべきものが来たか」と直感すれば、そりゃ落ち込みますよ。

最初の頃は「今後大丈夫なんですか?」なんて食ってかかりもしましたが、考えてみりゃ、あくまで部外者であるフリーのライターへ経営上の重大な問題なんて話すわけもありませんし、結果的にはある日突然終わりが来て、また御縁があればなんて話になります。

実際、ライターへの発注を打ち切った編集部の担当者や編集長が、別の編集部へ移籍したり独立起業してから「ぜひとも兵藤さんへ」と声がかかることは皆無じゃないので、一旦関係は終わるとしても、できる限り円満な形でフィナーレを迎えられるのが大事です。

でも、「これから生活が苦しくなるのに、どうしてくれようか」なんて、内心穏やかじゃなかったりしますけどね(苦笑)。

ただ、少しずつ発注を減らして、密な連絡もあえてやらず…というのは、「ハッキリ言えなくてごめん、そういうことだから、覚悟しておいてね」という、クライアント様からの優しさでもある、と思うようにしてます。

ダメな時はダメなんですから、恨むよりはそれまでの感謝が大事です!

────悟りの境地ですね…とはいえ、実際に生活が困るわけですが、そのクライアント様とのお仕事が終わりそうな時は、どうするんですか?

もちろん、別なクライアント探し…具体的には「ライター募集」なんてやってるWebメディアを検索しますが、募集してなくともメールで売り込みはしますし、以前お仕事をしていたクライアント様の景気伺いですとか、どこかにいい話が転がってないか探します。

以前はクラウドソーシングサイトも利用してましたが、そういうサイトも商売ですからそれなりに中抜きしますし、ライターを本業としてからは、使ってません。

ああいうところは、まずライターとしての初心者が経験値を積むためか、キチンと本業を持っている人が一時的な副収入を得るために使うならよいと思います。

クライアント側としても、長期的な発注以外に単発案件とか便利に使い分けているでしょうし、存在意義はあると思ってますが、生活かかってる立場となれば1円でも多くと考えますから。

いつかはライター活動再開!の想いを胸に秘め、別な仕事もアリ

いつかはライター活動再開!の想いを胸に秘め、別な仕事もアリ

これは「自分のパソコンをメンテ」している時だが、無機質に回る冷却ファン、暗闇の中で光る電子機器に明かりを当てて作業というイメージは同じで、インフラ保守の仕事にはメンタルを鍛えられた

────でも、そう都合よくライター募集なんてあるのですか?1円でも多く稼いで生活を安定させるなら、ライター以外の仕事がいいのでは?なんて思ってしまいますし。

まあ、そこはライターという仕事自体が好きですからね(笑)。

でも、実際にはどうしても次のクライアントが見つからない!しかし何とか生きていかなきゃいけないって時は、確かにあります。

でもライターであることはやめたくないので、本格的に転職するのではなく、すぐにやめても差し支えない仕事、ライターとしての活動を再開できても、どちらかを副業として続けられるような仕事を探しました。

────具体的には、どんなお仕事を?ヤバイ仕事なんかもあったりして…

フッフッフ…生きていけるならどんな仕事だって…さすがに手が後ろに回るような仕事はしてませんよ?

割とありきたりなパターンですが、パン工場なんかはいろんな意味でオイシイ仕事です。

私は皮膚病持ちですから、飲食業や、飲食物に直接触れるような仕事はNGなんですが、ちゃんと手袋つけて、包装されたパンの仕分けをするくらいはOKなんで、日本語学校に通ってるネパール人やスリランカ人だのと一緒に、深夜勤務してました。

ちょっとした国際交流みたいなもんで、時には試作のパンを試食しては笑顔で「オイシーイ!!」ってキャッキャと和んだり、従業員向けにパンを安く買えたり。

でも、休憩時間に食堂へ行くと、従業員割引のパンを買ったり自動販売機で飲み物買うのは日本人だけで、外国人の方は持ち込んだ弁当、場合によっては水だけとか、ハングリーにやってるわけです。

言い方としては微妙ですが、自分より大変な、過酷と言ってもいい環境で、それでも笑顔になってる人たちを見てると、俺だって凹んでばかりもいられないぞ!って気持ちになってくるんですね。

本業ライターで食っていこうとしたものの苦労している人なんかは、一度はパン工場とか、外国人労働者ががんばって職場で働いて、自分がいかに恵まれているか、目の前に転がっているチャンスがいかに多いかを知るのも、勉強になるでしょう。

────そういうメリハリのある人生が楽しそうなのも、ポジティブに考えられるからですね。

さっきも言いましたが、私は皮膚病の問題で営業や販売といった「人前に立つ商売」がしにくいので、ライター以外の商売だと精神修養とか、「自分と向き合う機会」が多く、そこでネガティブな思考をしていたらロクな事にはなりません。

他には、とある通信インフラ系の保守を請け負った事もありますね。

深夜に寝てる時でも、(裏声で)「てけてっ、てけてっ、てー↑てー↓てー↑てー↑てー↑」って携帯電話が鳴ると、ガバッと飛び起き…

────なんですかその「てけてっ!」って?着メロ?

「機動戦士ガンダム」でホワイトベースに敵襲があると、戦闘配置につかせる警報が鳴るじゃないですか…って、興味がなければ知りませんよね…とにかく、何でもいいから自分を奮い立たせる必要があったんですよ(苦笑)。

守秘義務の関係で詳しくは話せませんが、どこかでインターネットのデータがうまく流れないだのってトラブルがあれば連絡が来ると5分以内に家を飛び出し、毎回違う場所で場合によってはえらく遠い某所へ、メンテナンスに行かなきゃいけません。

航空自衛隊のスクランブルみたいなもんですが、交代要員のいない24時間365日待機ですから、考えようによってはもっと過酷かも…ただ電話が鳴るだけでビクッ!となりますから、出動命令を伝える携帯電話の着メロは、なるべく気分がアガるように変えてたんです。

それで某所に着くと、同じようにスクランブルしてきた業者から必要な部品を受け取り、機械はギッシリ並んでいるけど無人の場所へ入場して、オペレーターとやり取りしながら部品交換などをやります。

自分がメンテする場所だけでは問題が解決しない時とか、深夜に数時間も待機しなくちゃいけない場合もあり、精密機器の冷却ファンがものすごい数、ゴゥゴゥとうなっているだけで無人の場所に座り込み、眠るわけにもいかずに、ひたすら「無」の境地。

「世界って、決して表に出ないこういう仕事に関わる人々がいてこそ、回っているんだな。」という事を知れば、その後の執筆活動でも「会ったこともない、会うこともないであろう同志」の存在へ、想いを馳せるようになります。

辛い時期でも何でもいい、自信は失わないようにしよう!

辛い時期でも何でもいい、自信は失わないようにしよう!

ライターの仕事が少なく、近所のミニサーキットで旗振りのバイトをしていた頃…「腐らなければ、なんとかなるもんだよ!」

────お話を聞いてると、全く関係がないようで、ライター業に全部つながっているんですね?

そう思うようにしているだけ、とも言えますけどね(笑)。

どうしてもクライアントが見つからず、執筆活動ができない時は、思い切ってライター業と全然関係ない仕事をして、刺激を受けるのも一興です。

もちろんなんでもいいから文章を書いたり、セミナーを受講したり、資料を読んで勉強してもいいんですが、1円にもならないんじゃ生きていけませんから、そういうのはガッポリ貯金を持っているか、同居してるパートナーが稼いでくれてる時に限ります。

そういう恵まれてる環境にないのであれば、何か稼げる仕事をしたうえで、知識でも技術でも精神面でも何でも構いません、自分自身の糧にしていくのと、「自信をつける」のが大事ですよ。

支えてくれる人もいない、何もすることがないでは、どんどん気持ちが堕ちていきますから、「えーいどうにでもなれー!」って酒飲んでひっくり返って寝るにしても、3日くらいにしといた方が無難ですね。

────なんで「3日くらい」なんでしょう?

ライター業やってたら、スランプでいきなり書けなくなり、3日くらいひっくり返って寝てるなんて普通にあるでしょう?

それくらいなら「ライターとしての日常」として普通にありますし(笑)、それ以上だとクセになるから、ホドホドにして働け!ってワケです。

この記事を書いたライター

執筆者

兵藤忠彦

失われた10年?30年?まあボチボチ気楽に生きましょうや!という1974年生まれの専業ライター。自動車関連が専門の中では珍しいダイハツ派で、過去に全日本ジムカーナへスポット参戦時はストーリアX4やリーザTR-ZZ、現在もソニカRSリミテッドが愛...

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