執筆真っ最中なライターのブラウザは、タブがスゴイことに?!
タブのアイコンでどこのWebサイトかわかるのはまだマシな方…
────はいどーもー!今回は兵藤さんが執筆時の調べ物について…って、うわっなんですかこれ?!Googleのタブがすごく細かく無数に開いて、なんだかわからなくなってますよ?
おーどこの「漫才のつかみ」かと思ったらキミですか。なんか驚いてますけど、「ライターあるある」で、各種の記事なり、あとは論文とか書く人なんかも同じような感じだと思いますよ?
────ブラウザだけじゃなく、なんかそのへんでゴミ箱のフタの上にある冊子とか、薄い本(同人誌)も目立ちますけど、これ全部資料ですか?丸写し?(笑)
これっ!失礼なことを言うもんじゃありません!(汗)
そりゃ頭の中にこれらの内容が全部入ってれば言うことなしですけど、実際にはそれができるかどうか、人によりけりじゃないですか。
特に私なんか50歳、どう考えても脳みそのポテンシャルが落ちてますから、アレコレの資料を全部頭に詰め込んだって、もう脳内で「どこにしまったっけかなー」状態なわけですよ。
そこで自分なりの脳内の整理法としては、インデックス(索引)だけを脳内の目立つとこに置いておいて、記事を書くのに必要な知識が欲しかったら、そのインデックスを元に、Webや書籍を引き出しにして、情報を引っ張り出してきます。
脳内インデックスの引き出しとしては、「ウィキペディア」もよく使いますね。
────ウィキペディアなんて大丈夫ですか?なんか昔からの知り合いは「ウィキペディアなんてデタラメだ!あれは”ウソキペディア”だ!まで言っちゃってますけど。
んー、記載内容としては、「オイオイそりゃ違うだろ」ってのが多いのも確かでしょう。
でも私の場合は自動車系のライターですし、ウィキペディアでは新車の発表やモデルチェンジ、マイナーチェンジのリリースなど、単に日時だけじゃなく、メーカー公式へのリンクを貼っていることも多いんですね。
たとえばトヨタの「クラウン」、日産の「スカイライン」みたいに、数十年にわたって十何代も世代を重ねてきた車種の場合、概要だけでも1ページですべてを網羅してる「ウィキペディア」は、すごく便利です。だから私としてはあくまで、「記憶の引き出し」として活用させてもらってますね。
古い車だと、掲載された情報に対してメーカーへのリンクが貼られてない場合もありますが、そういう時は「どうもこういう事実があったらしい」とわかるだけでも、メーカーのプレスページとか検索しやすくなりますし、時短ってやつです。
国会図書館にはWebで閲覧可能な書籍も!地方在住者の強い味方
筆者はPCのCPU温度管理に「Core Temp」というソフトを使っていますが、さすが10年落ち以上のマシンだけあって時にはオーバーヒート寸前、冬には暖房代わりに(汗)
────モノは使いようってやつですか。中には便利だからってウィキペディアをリライトして記事化しちゃうライターさんがいるかもしれませんね。
そこまでの話になると、メーカー公式の発表と食い違いが出てくる場合もあるから、アテにするのは危険ですけどね。
ただ、「じゃあメーカー公式なら何もかも正しいのか」と言われると、これまたメーカーさんでも公開しているページによって「記載された事実に統一感がない、他のページと違うこと書いてる」場合もあります。
だから最後は「細かい数字とかは多少ブレても仕方ないんだよ!本質さえ外していなければいいの!」って割り切りも必要ですけどね(笑)。
たとえば生産台数なんてのも、それは世に出た車だけなのか、試作車も含めるのか。試作車の中にはちゃんと登録してナンバーを取得し、公道を走ってるけど細かい仕様違いもあったり、はたまたレース用でナンバー取ってない車両だの、「その車種の生産台数に含めていいのか」って事例はナンボでもあります。
「ウィキペディア」でも、そのへんちゃんと心得て「諸説ある」みたいに書いてる記事は好感持てますけど、いずれにせよそれを元ネタに記事を書くなら、メーカー公式なり、当時の関係者インタビューから少しでも裏取りする努力はしてほしいですね。
それでハッキリと裏取りできない場合には、「諸説あって定かではないが」で、いいじゃないですか、どのみち関係者ですら厳密な数字を把握してるか怪しいもんですし。
────その「裏取り」の積み重ねが、ゴチャゴチャしたブラウザのタブとか、そこのゴミ箱のフタの上にぶん投げてある書籍ですか。
んーこれらはあくまで「氷山の一角」というか…ブラウザなんかもホラ、同じようにタブだらけの別ウィンドウが他にもあったりしますよ?(笑)
私の場合、今は電気自動車関連の仕事がメインになってますけど、旧車関連の記事もまだ仕事としてやってますし、相当古い話も資料から漁らないといけません。
そんな時に便利なのが「国立国会図書館サーチ」。昭和20年代後半あたりから昭和30年代前半とか、日本で国産車の産業が二輪、四輪、はたまたオート三輪と立ち上がっていく時期に刊行された書籍じゃないと、わからないことの裏付けを取るには便利ですね。
東京に住んでいれば、神田神保町の古本屋巡りでもして「おっこれは使えるぞ?」なんて資料集めもいいんですが、地方在住だとなかなかそうはいきませんし、国会図書館には時々助けてもらってます。
一番印象に残ってるのは、1955年(昭和30年)にFRP(繊維強化プラスチック)ボディの3輪超小型車「フジキャビン」を発表、翌年に発売した「富士自動車」って会社のことを調べた時かな?富士と言ってもSUBARU(旧「富士重工業」)のことじゃないですよ?
戦後復興期から朝鮮戦争の「特需」にかけて、米軍車両の修理再生でのし上がって、もしかしたらそのまま名のあるメーカーになってたかもしれませんが、そうはならなかったので、全盛期の発展記録なんて当時の書物にしか詳しい記載がない!
それで国会図書館から検索かけたら見つかったので、無事に記事へ情報を反映できたというわけです。
自分の知識だけではムズムズしてくる、ライターの性
知識のモトはインターネット上だけにあらず、紙じゃないと得られない話もあったりで、古本を片端から読みふけって、頭に詰め込みたくなる時もあります
────そうやって深堀りしていくと、どんどん知識がついて「生き字引」みたいになっていきそうですが、先程の話で行くと「そりゃ無理だ」と?
うん、ひとつのテーマをずっと追い続けて連載記事でも書くなら、脳内に深く刻み込まれるかもしれませんが、あくまで「ある車種を紹介する記事で、その背景も紹介した方が面白いじゃないか」って、その場限りの話ですからね。
生き字引みたいな役目は学者先生とか、どっかの大学院の研究生、はたまたカーマニアにお任せしていいんじゃないかと…あるいは、私がそうやって書いた記事を読んでくれた読者の中でも、記憶力に自信がある人が覚えてくれていたらそれで構いません。
それで知識をつけた人が、「よし、こんな記事なら自分でも書けるぞ!」ってライターを志し、私と同じ沼にハマるのもまた一興、というわけでして(笑)。
────でも、なんだかんだで知識をいっぱい詰め込んで、脳内で安定させたら今みたいにブラウザのタブや書籍を積み上げなくても、同じ時間でもスイスイと何本も記事を書いて、儲かるんじゃないですか?
それをやってるのがAI(人工知能)だと思いますけど、知識というか「事実」って常にアップデートされていくんですよね。
だからさっきは国会図書館で古い書物を探して…なんて話もしましたけど、新しい資料で「新事実」が見つかっていれば、そちらの方が正しいかもしれない、でもWeb上には古い記録も、新しい記録も混在してて、フェイク(偽記事)もたくさんあります。
だから、とりあえず覚えている知識で記事を書いてみるか…なんてやってると、何となくムズムズして資料を探し直してみたら、「あれ?今はこういう新事実が出てきたの?」とか、「もっと細かく分析した資料があるじゃない!」なんて、しょっちゅうです。
もちろん、自分が「知っているはず」の知識とは違いますから、どっちが正しいんだって裏取りかけて、ハッキリすれば新事実、ハッキリしなけりゃ新旧混合の「事実?」を断言しない形で書いて、その先は読者に委ねたりと。
以前は何時間もかけてしつこく調べてましたが、ライターも「1記事あたり、あるいは1文字あたりいくら」って単価で商売してますから、例えば単価2,000円の記事を書くのに5時間も6時間もかけたらアシ(赤字)が出るし、そのへんはホドホドに、となります。
そこで一番やっちゃいけないのは「よくわからんけど、こうだ!」って断言しちゃうことで、読者の皆さんも、それが著者の知ったかぶりなのか、数ある諸説の紹介に留まっているのかにも気をつけて読むのを、オススメします。
ライター初心者の「デジタルタトゥー(黒歴史)」?
昔通ってたステーキバーの名物、派手なフランベ…「今こんなコト書いたら、自分の心境として炎上モノだな」って記事も昔は(今も?)あったが、「知るほどに、まだ知らないことが一杯ある!」と認めるのも、ライターが成長するための第一歩だと思う
────しかし、そういう「新事実」が出てきちゃうと、過去に書いて公開された記事なんかはマチガイだらけなんてことは…。
「間違い」や、「解釈違い」はもう仕方ないです。
だいたい今の教科書で紹介してる日本史だって、鎌倉幕府の始まりは私が子どもの頃だと1192年、「いいくに(1192)作ろう鎌倉幕府」で覚えてたのに、今じゃ1185年って事になって、「いいはこ(1185)作ろう」になってるじゃないですか?
…なんて強がり言ってみましたけど、過去記事を思い出して、アチャー、結果的に適当なことを書いてしまったこともあるのかな…と思い出すことはあります。
まだ関わっているメディアさんならともかく、離れてずいぶん立つとアレコレ言うにも部外者ですから…「若気の至り」と思うしかないですね。
ただ、そういうことを考えると、今から始める、あるいは始めて間もないライターさんは、あまり本名とか、ペンネームにしても後々まで使う「本命」の名前は、安易に使わない方がいいかもしれません。
「名前を売る」には本名や長く使う本命のペンネームがいいんですけど、若気の至りでこんなの書いちゃってましたでは、ちょっとカッコつかないですからね…Webライターの場合はこれも一種の「デジタルタトゥー」かも?
記事を書くために調べれば調べるほど、いろいろな事実が出てきては新しい知識を獲得したり、それまでの自分の知識が誤っていたと思い知らされるのは、「ライター」という職業の宿命です。
しかも、そうやって調べた情報が実は時間とともに古くなったり、誤っていたと明らかになる場合もありますから、常に自分の知識と向き合い、自己否定を恐れず、常に「最新の自分」である努力を続けなければいけません。
このように、「自分がいかに何も知らないか」を痛感し、その事実を認めながら仕事をするのがライターですし、仮にその知識が万全ではないと知っていてもなお、その時の自分が知る限りを伝えるのがライターにとっての使命であり、メシの種だと思ってください。
これからライターを始めようとする方は、仕事をすればするほどに、己の無知を自覚するでしょう…しかしそれはライターという旅人にとって、避けては通れない一里塚であり、ライターを続ける限り、「始まりはあっても終わりはない」と心得ていただければ、幸いです。
この記事を書いたライター
兵藤忠彦
失われた10年?30年?まあボチボチ気楽に生きましょうや!という1974年生まれの専業ライター。自動車関連が専門の中では珍しいダイハツ派で、過去に全日本ジムカーナへスポット参戦時はストーリアX4やリーザTR-ZZ、現在もソニカRSリミテッドが愛...