スランプとは
「興味ない。知識ない。でも引き受けちゃった、どうしよう」
わかります。「案外やれそうじゃない?」と、引き受けたものの、いざ書こうとすると指が動かない。ライターとして自信がついてきたくらいにやってくるパターンです。私の場合は「創作落語」でした。当時は見たことも聞いたこともありませんでした。笑えるシナリオというのは泣かせるシナリオよりも何十倍も難しい。やすやすと引き受けてしまったけれど、一体どうしたものか……と困り果てた思い出があります。しかし、スキル不足による言葉のブロックは一時的なものですので、情熱さえ取り戻せば克服することができます。
step1:思考するのをやめる
まずは頭で考えるのをやめます。
いきなり精神面の話になってしまい恐縮ですが、すでに思考停止になっている状況で文面を考えても脱出は難しいです。自分の心と向き合って、心構えを整えることから始めます。人間は、目的に向かって生きています。ということは、スキル不足を実感するためにそのお仕事をわざわざ引き受け、ご丁寧にスランプを起こしているのだと、私は考えます。引き受けたあのときの自分は、当時の人生で最も進化しているときの決断だったわけですから、最善・最良の選択をしているはずなのです。
挑戦する勇気を以前は持っていたのですから、その意欲はいま眠っているだけで、実はすでにあるのです。興味もなく、知識もないことに取り組むことは、新たなスキルの習得と成長の機会を与えられ、それらを勝ち取りにいく大チャンス。超えられない試練を自ら選択するはずはないからです。
以上のことを踏まえて、自分への信頼を奮い立たせます。しかし要注意、昔の作品を見て「いやあ、あのころは良かった」などと過去の栄光に浸ってはいけません。大掃除をしていたら大好きだった漫画を見つけて「懐かしい」なんて言いながらうっかり開いて、最後まで読んだら午前様、おかしいな、部屋がひっちゃかめっちゃか……とかいうことをやっている場合じゃないのです。それは過去に生きていることになるからです。我々はいまこの瞬間にしか生きていないのですから、いまの自分を信頼するんです。「大丈夫、自分ならできる」と焦りを覚えさせるのではなく、「この文章を絶対に完成させる」とただ誓う。シンプルに、決めるだけです。
それだけ? はい、それだけです。実は人間、できないことはありません。できないのではなく、やりたくないだけです。そのあたりも踏まえて、まずは自分と向き合ってみてください。
step2:さしあたってWeb検索
自分への信頼を取り戻せたら(ような気がするだけでもOK)、与えられたテーマについて、とりあえずWebで検索してみます。文章を依頼されるような分野になっているということは、その分野に一定の人気があるからです。ということは、そこに人が惹きつけられる「面白さ」があるわけです。どんな角度からでもいいのです。自分がピンとくる要素を、よーく目を凝らして見つけます。
step3:思いのままに書いてみる
少しでも要素が見つかったら、さっそくテキストを書いてみます。いきなり超大作や専門書のようなものを書く必要はないですから、自分が気になった要素だけをピックアップして、短文を書いてみます。物足りなければもちろん長文でもいいです。まずは、書けるところまで書いてみてください。1時間やったら休憩です。なにもせずにぼーっとする。スマホも見ないほうがいいです。5分ほど休憩したら続きを書きます。書くことがなくなったらstep2からくり返します(また意欲をなくした場合はstep1から)。これで若干、スキルアップを感じることができます。そのプロセスを楽しんでください。
これを毎日やると、確実に書けるようになっています。あとは最後まで書くだけです。大事なのは読み返さないこと。意識が分散されるのでやめましょう。駄文だと感じても最後まで書きます。問答無用で書くだけです。
step4:文章を寝かせる
書き終わって、締切までに余裕があれば数日置きます。余裕がない場合は翌日でもいいです。長ければ長いほうがいいと思います。そして時間が経ったら、読み返します。当時は見えなかった「ほころび」がたくさん見つかると思いますので、適宜、推敲していきます。
step5:もう一度、文章を寝かせる
推敲が終わったら、また置きます。step4と同じように読み返し、ただひたすら推敲です。すると、あーら不思議。完成しているじゃないですか。
実践してみるとわかりますが、「興味ない。知識ない」と思っていたテーマほど、満足度だけでなく、これまでの自分の文章よりもクオリティが高いです。達成感はもちろんですが、この頃には確実にスキルアップしている自分と出会えているはずです。
スランプはポジティブ
鋭い方ならおわかりかと思いますが、スキル不足を味わうのは、実はとても良い経験です。なぜなら、ただそこから前進するだけで、新たな表現の道が拓かれるからです。未知の分野への飛躍やスキルの向上を通じて、自分自身に新たな可能性を見出し、創作の楽しみを再び取り戻すドラマティックな体験は、ライターの醍醐味でもあります。
みなさんのクリエイティブな旅路が、より一層輝かしいものとなることを願っています。
この記事を書いたライター
立石
本業ではゲーム制作のシナリオ・音声収録のディレクションをしつつ、副業ではSEO対策記事、CM脚本、占い鑑定書の執筆など幅広く活動中。ひと仕事を終えた後のお酒は格別。エンタメ関係のお仕事にも挑戦していきたい!