参考|厚生労働省:副業・兼業に係る実態把握の内容等について

【結論】就労規定で副業禁止が定められていても副業はできる

【結論】就労規定で副業禁止が定められていても副業はできる

結論からいうと、会社の就労規定で副業が禁止されていても副業はできます。そもそも本業の労働時間外であれば、どのように時間を利用するのかは個人の自由なのです。日本国憲法22条1項にも

”何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転および職業選択の自由を有する”

出典:e-GOV

と定められており、就業後や休日の時間を利用した副業を保証するものでもあります。一方、以下のような場合は、会社から制限される可能性があります。

  • 労務提供上の支障がある場合
  • 業務上の秘密が漏洩する場合
  • 競業により自社の利益が害される場合
  • 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

要するに本業の不利益となる副業は、制限をかけられる可能性が高いということです。その点に留意していれば基本的に副業は自由に行う権利があります。

副業禁止の公務員でも許可を受ければ一部副業ができる

副業禁止の公務員でも許可を受ければ一部副業ができる

副業が禁止されている公務員でも許可を受ければ一部副業ができます。例えば以下のような場合です。

    • 家業の手伝い
    • 小規模な農業
    • 執筆・講演・著作権などの知的財産権による収入
    • 不動産の賃貸や管理
    • 株式投資・FX・仮想通貨取引
    • フリマアプリやポイントサイトなどの副収入

    公務員は、国家公務員法第103条及び104条、地方公務員法第38条により、原則として副業が禁止されています。これは国や国民のために働く奉仕者であり、その職務を全うする必要があるためです。

    ですが、近年では兵庫県神戸市や奈良県生駒市など、公務員の副業を解禁する動きもみられ、公務員でもさまざまな副業ができる可能性を秘めています。

    会社で副業が禁止される背景

    会社で副業が禁止される背景

    会社で副業が禁止される背景はさまざまです。ですが2018年に労働政策研究・研修機構が行った調査では、会社が副業・兼業を許可しない理由の1位が「過重労働となり、本業に支障をきたすため(82.7%※複数回答可)」でした。

    また、2位に「労働時間の管理・把握が困難になる(45.3%)」、3位に「職場の他の従業員の業務負担が増大する懸念があるため(35.2%)」となっており、労務管理や本業に支障が出る懸念を示唆した結果となっています。

    このように会社が副業を禁止する背景には、会社側の合理的な理由があることが理解できます。

    参考|経団連:副業・兼業の促進

    【注意しよう】会社で副業が制限あるいは違反となる4つのケース

    【注意しよう】会社で副業が制限あるいは違反となる4つのケース

    本章では副業が制限あるいは違反となる可能性がある、以下の4ケースについて解説します。

      • 本業の労務提供に支障をきたすケース
      • 自社業務の秘密が漏洩するケース
      • 競業により自社の不利益を与えるケース
      • 自社の名誉や信用を損ねるケース

      副業を始めてみたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

      ①本業の労務提供に支障をきたすケース

      従業員の副業によって長時間の労働が行われ本業に支障をきたす場合は、副業を制限される可能性があります。

      労働契約法上、労働者は雇用契約に基づく労働義務を誠実に履行する義務を負っています。この義務に違反するような副業を行うと本業の労務提供に支障をきたす可能性があるため、会社は副業を制限できます。

      なお、副業が本業の労務提供に支障をきたすかどうかは、個別の事情によって判断されるため、一概には断言できません。ただし、長時間労働によって本業に支障が出ると会社に判断された場合には注意が必要です。

      参考:e-GOV

      ②自社業務の秘密が漏洩するケース

      自社業務の秘密や情報が他社に漏洩する場合は、副業を制限される可能性があります。また場合によっては違反となり処分に発展するケースもあるのです。

      労働者は、使用者の業務上の秘密を守る義務(秘密保持義務)を負っています。この義務に違反して自社業務の秘密を漏洩する可能性がある副業を行うと、会社の利益や信用を損なう懸念があります。

      そのため、本業で扱っている情報や技術を利用する副業が秘密漏洩にあたるかどうか、あらかじめ会社に確認しておくようにしましょう。

      ③競業により自社に不利益を与えるケース

      競業により自社に不利益を与える場合、副業を制限もしくは違反となって処分される可能性があります。

      労働者は、使用者の正当な利益を害するような行為をしてはならない義務(競業避止義務)を負っています。競業避止義務の規定は、就業規則や雇用契約書に定められていることが多いため、副業を検討する際には、これらの規定を確認しておくことが重要です。

      本業の競合となる会社で副業する場合には、とくに競業避止義務に注意しましょう。

      ④自社の名誉や信用を損ねるケース

      本業である自社の名誉や信用を損ねる場合は、副業を制限もしくは違反となって処分される可能性があります。

      労働者は、使用者の名誉や信用を損なう行為をしてはならない義務(誠実義務)を負っています。この義務に違反する場合は、会社は副業を制限することが可能です。

      例えば、A社に勤務する従業員が副業を行うことで、A社の取引先や顧客との信頼関係が損なわれる場合です。他にも副業先が反社会勢力に加担する仕事といった場合も同様です。

      副業先を選ぶ際は、取引先や業務内容をしっかり確認するようにしましょう。

      副業禁止の会社でバレるリスクを抑えて副業をする方法

      副業禁止の会社でバレるリスクを抑えて副業をする方法

      副業するのは自由とわかっていても、本業との関係でできるだけ副業を隠しておきたい方もいるのではないでしょうか。本章では副業禁止の会社でもバレるリスクを抑えて副業をする以下の方法を解説します。

        ポイント
        • 自分で住民税を納付する
        • 副業していることを拡散しない

        それぞれ詳しく解説します。

        自分で住民税を納付する

        自分の副業で得た所得分の住民税を納付することで、副業がバレるリスクを軽減できます。住民税の納付方法は大きく分けて以下の2つです。

        特別徴収住民税を会社の給与から天引きして納付する方法
        普通徴収住民税を自分で納付する方法

        会社員で副業所得を受け取っている場合は住民税が高くなるため、会社にバレるおそれがあります。一方の普通徴収は、副業所得分の住民税を自分で納付できるので、住民税が高くなることが理由で会社にバレるリスクを軽減できます。

        副業がバレたくない方は、住民税の納付を普通徴収にしましょう。詳しく知りたい方は、お住まいの役所に相談してみるといいでしょう。

        副業していることを拡散しない

        副業していることを拡散しないようにすることで、副業がバレるリスクを軽減できます。いたってシンプルな方法ですが、重要なことです。本業の関係者に話すことや個人のSNSアカウントからの発信など、副業をしていることを拡散するのは控えましょう。

        SNSで発信したい場合は、ビジネスアカウントを作成して身元がバレないよう注意しながら運用するといいでしょう。

        副業禁止についてよくある質問

        副業禁止についてよくある質問

        副業禁止についてよくある質問とその回答をまとめました。

        給料が低いのに副業が禁止されています。どうしたらよいでしょうか?

        一番の解決策は「会社に相談する」です。ポイントとしては、「どのくらいの収入があればいいのか?」「なぜ、副業するのか?」を整理して相談することです。

        「給料が低い」ことと「副業する」ことを上手く説明できるようにしましょう。原則、副業は自由ですが、紹介した4つのケースに触れる可能性もあるので、どのような副業を考えているかも決めておきましょう。

        副業禁止の会社は違法ではないのですか?

        就業規則に「副業禁止」の条文を設けるのは違法ではありません。就業規則はあくまで会社と労働者との間の労働契約を補完するものです。

        また、就業規則の規定が労働者の権利を過度に侵害している場合、無効となる可能性があります。副業禁止の条文が労働者の権利を侵害しているかどうかは、個別の状況によって判断されるので、一概にはいえません。

        副業禁止は日本だけですか?

        副業禁止の企業文化があるのは日本だけではありません。フランスは労働協約や雇用契約で副業を禁止することが可能で、オランダも日本同様に法的には禁止していませんが、就業規則などで禁止する傾向がみられます。

        アメリカは副業に関する法的な規制や労使共に義務はなく、ドイツは理由を伴わない一律の全面禁止は無効とされています。

        まとめ|副業に興味が湧いたら就業規定を確認しよう

        本記事では、会社で副業を禁止する背景や副業する際の注意点、バレるリスクを抑える方法について解説してきました。実質賃金や景気が上がらない日本で、昇給だけを期待するのではなく副業で「別の収入源を確保したい」と考えるのは当然のことかもしれません。

        しかし、副業にはリスクがあることを忘れてはいけません。副業禁止の会社で副業をした場合、処分を受ける可能性もあります。また、副業が本業に支障をきたす場合や、競業他社との取引に影響を与える場合には、会社から訴えられる可能性もあります。

        副業を検討する場合は、これらのリスクを十分に理解した上で行うことが大切です。会社に許可を得るか、副業とみなされない方法で収入を得るなど、リスクを抑える対策を講じることも検討しましょう。

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