ワーケーションには4種類ある

熊本県・黒川温泉の夜景

熊本県・黒川温泉の夜景

ワーケーションは英語の「Work(ワーク)」と「Vacation(バケーション)」を掛け合わせた造語です。具体的には、自宅やオフィスから離れたリゾート地などからリモートワークで業務を進めながら、グルメや観光などその地域ならではのアクティビティも楽しむような働き方を指します。

観光庁の定義によると、ワーケーションは「余暇主体型」および「業務主体型」の2種類に大別されます。さらに、業務主体型ワーケーションは働き方や目的によって3種類に細分化されるため、全部で4通りのワーケーションがあるといえます。

ワーケーションの種類 実施形態
余暇主体型 福利厚生型 有給休暇を活用してリゾートや観光地等でテレワークをおこなう
業務主体型 地域課題解決型 地域関係者との交流を通じて、地域課題の解決策を共に考える
合宿型 場所を変え、職場のメンバーと議論を交わす
サテライトオフィス型 サテライトオフィスやシェアオフィスでの勤務

参照:観光庁

たとえば私の場合、フリーランスなので有給休暇はありませんが、「リゾートや観光地等でテレワークをおこなう」という意味では「余暇主体型」のワーケーションをしているといえますね。

企業がワーケーションを導入しない(できない)理由

カフェで仕事中の様子

カフェで仕事中の様子

観光庁が2021年に実施した調査によると、日本国内におけるワーケーションの実施率はわずか5.3%。ワーケーションを導入しない理由を企業に聞くと、主に次のような回答が得られました。

  • 業種としてワーケーションが向いていない(60.5%)
  • 「ワーク」と「休暇」の区別が難しい(20.5%)
  • ワーケーションの効果を感じない(16.3%)


参照:第一生命経済研究所

最も多かった回答は「業種としてワーケーションが向いていない」でした。たしかに世の中には、飲食店やアパレル店のようにワーケーションの導入が非現実的な業種も存在します。

私が気になったのは、「ワーケーションの効果を感じない」という回答です。個人的には、自社にワーケーションを導入したくない企業担当者の本音は、この回答に凝縮されているのではないかと感じます。

ワーケーションのような新しい働き方を企業が導入するためには、それまでの社内制度を見直す必要があります。長年踏襲してきた人事制度基準や労務管理制度を再設計する苦労は、並大抵ではありません。そこまで時間と労力をかけるのですから、企業としては「ワーケーションにはこんなメリットがある」と確信できるまで、ワーケーションの導入に踏み切れないわけです。

ワーケーションは従業員・企業の双方にメリットがある

鹿児島県・番所鼻自然公園の絶景

鹿児島県・番所鼻自然公園の絶景

「ワークをしながらバケーションも満喫できる」と聞いただけでは、従業員にとってのみオイシイ話に思えてしまうワーケーション。しかし、2020年にNTTデータ経営研究所、JAL、JTBなどが産学連携で実施した実験結果によると、ワーケーションには経営者目線からもメリットが大きいことがわかりました。

同実験によると、ワーケーションを経験した従業員には次のような影響が確認されたといいます。

  • 仕事とプライベートの切り分けが促進される
  • 情動的な組織コミットメント(所属意識)を向上させる
  • 実施中に仕事のパフォーマンスが参加前と比べて20%程度上がるだけでなく、終了後も5日間は効果が持続する
  • 心身のストレス反応の低減(参加前と比べて37%程度)と持続に効果がある
  • 活動量(運動量)の増加に効果がある(歩数が参加前と比べて2倍程度増加)


参照:NTTデータ経営研究所

ちなみに翌年の2021年、NTTデータ経営研究所はNTTコムリサーチとの共同企画調査で次のような事柄も明らかにしました。

  • ワーケーションに関する知識の有無によってワーケーションに対する印象が異なる
  • ワーケーションに関する知識の有無によってワーケーション取得時の心理状態が異なる


参照:NTTコムリサーチ

ワーケーションに関する知識が豊富な人ほど、ワーケーションに対してポジティブな印象を持ちやすくなるわけです。企業の人事担当者はもちろん、現代社会で働く私たち一人ひとりがワーケーションについての知識を深めれば、ワーケーションに関する偏った印象評価はおのずと是正されていくでしょう。

ワーケーション×Webライティングは相乗効果バツグン!

高知県・四万十川で童心に帰って水切りに興じる榎本

高知県・四万十川で童心に帰って水切りに興じる榎本

さいごに、今この記事を読んでくれているライター諸賢が「自分もワーケーションしたいかも」と思えるような研究結果をひとつ。

とある心理学者が、米インディアナ州の大学生数十名を2グループに分けて、それぞれのグループに「できるだけ多くの交通手段を挙げなさい」と課題を出しました。その際、片方のグループには「これはアメリカを離れてギリシャで学ぶ米インディアナ大学の学生が考えた課題だ」と伝え、他方のグループには「これは地元インディアナ州で学ぶインディアナ大学の学生が考えた課題だ」と伝えました。

結果は不思議なことに、課題の内容は同じであるにもかかわらず「ギリシャで考えられた課題だ」と教えられたグループの方がより多くの交通手段を思いついたというのです。「遠い場所で考案された課題だ」と聞かされたグループの学生たちは、自分たちにとって身近な交通手段に固執しなくなり、世界中を飛び回るための手段を柔軟に考えられたといいます。

この実験は、解釈レベル理論という学術理論に基づいて企画・実施されました。解釈レベル理論とは簡単にいえば「人間は”距離的に遠く感じられる物事”ほど抽象的に思考しやすくなる」という考え方。つまり、被験者となった学生たちは「(自分たちの日常生活と)距離がある課題だ」と感じることによって、通常よりも柔軟で幅広い考え方ができるようになったのです。

この解釈レベル理論をWebライティングの仕事に当てはめると、「取り組んでいるテーマと物理的・心情的に距離を置くと、新しい視点を持ちやすくなる」と言い換えられます。ワーケーションでは日常生活の拠点を離れて仕事をするため、それまで手詰まりに思えていたライティングテーマも違う視点で捉えやすくなるでしょう。

ChatGPTをはじめ、ここ数年で生成AIサービスは劇的な進化と普及を遂げています。ありきたりな文章なら誰でも無料・自動で作れてしまう時代において、他のライター、いわんやAIには真似できないような創造力に富んだ文章が書けるかどうか。それこそが、現代におけるWebライターの存在意義ではないでしょうか。その観点からすると、自身の思考の殻を破るためにも、ワーケーションは非常に有意義な試みといえます。

一駅となりの喫茶店から地球の裏側まで、ワーケーションの行き先はあなたの自由です。ぜひ気分転換を兼ねて、いつもと違う環境で筆をとってみてはいかがですか?

この記事を書いたライター

執筆者

榎本力良

ノマドワーカー。学生時代はカナダ・中国・ドイツの3か国への交換留学を含め世界10か国以上に滞在。民間就職後、「時間と場所に縛られない自由な人生」を志向してライターに転身。2024年1月からは妻と2人で日本一周のバンライフを開始。2025年以...

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