知らない街まで足を運ぼう
文字を書くにはインスピレーションが必須。家にいて本を読んだり映画を見たりすることもきっと糧にはなりますが、私は煮詰まりが限界まで来た時はいつもバスに乗って小旅行に出かけていました。
これは私がヨーロッパへ留学していた時のエピソードなのですが、明日中に提出しなくてはいけないエッセイがどうしても書けず、深夜の0時に頭を悩ませすぎて〝もう…耐えられない!〟と発作的に夜行バスのチケットを取って国を飛び出したことがありました。
実はこのような行動は初めてではありませんでした。私の住んでいた国はヨーロッパの中心にあるうえにとても小さく、島国である日本のように気合いを入れて高いチケットを買い他の国へ行くぞ!…という必要がありませんでした。
思い立った瞬間に長距離バスのチケットを破格で購入して、バスに飛び乗ればいつでも他の国へ遊びに行けたのです。
このバスには基本的にWi-Fiとコンセントと小さな机がついており、大学の課題やエッセイの仕事をするにはもってこいの環境でした。
スランプに陥るたんびに行き先を問わず5〜6時間かけて行ける場所のチケットをランダムにサイトで購入していました。
当時は往復でも2,000〜3,000円で国外に出られたため、スランプを抜けるための経費としてはぽんと出せる金額だったのです。
持ち物はシンプルにパソコンとイヤホン、そして財布だけ。余計なことを考える隙間のない狭いバスの座席で、ひたすらに暗闇の中を月を追って走るバス。他の乗客はアイマスクをつけて眠っている…
そんな最高の環境で書く仕事をすると、いつでもどうにかこうにか完成したものです。
長い長い夜が明け原稿を完成させた朝は最高!目的地に降り立った私はそのまったく知らない街のカフェで朝ごはんを嗜み、ぶらぶらと半日の散歩をして、帰路のバスで再び読み直しをして原稿を提出していました。
本当に切羽詰まっているときはただバスに乗り、目的地からまた即折り返したりもしたものです(笑)。もったいないチケットの使い方かもしれませんが、バスから見える景色を眺めながらする作業は本当に捗ります。もちろん即Uターンの国には後日きちんと訪問しましたよ。
知らない駅、知らない方言。
そんなエピソードは海外すぎる!と思われた方もいるかもしれませんが、実は日本でも似たようなことをしています。
日本の夜行バスは作業するにはちょっぴり狭すぎる印象だったので、基本的に移動は飛行機を選んでいます。
狙い目はANAやJALやPeachが定期的に行う航空券セール。その期間にどこでもいいのでチケットを予約してこのスランプを脱却しよう…とさまざまな場所に逃避行にでかけていた私です。特に羽田からの九州地方へのチケットはおすすめです。
例えばですが、一年ほど前に大分県に飛んだ時のフライトは特別セールでなんと往復4,000円でした。
やはりパソコンとAirPodsだけを荷物に入れた私は、ガラガラの飛行機の中でなんとか一本めの原稿を終え、大分の街を散歩しながらひたすら二本めの構想を練っていました。
地元のローカル線に飛び乗り、二両だけの電車にゆられながらぼんやりと気に入った地名の駅で降りて純喫茶に駆け込んだものです。その喫茶店でパソコン作業をしてもいいですか?と店主さんに尋ねたら、快諾と共に注文にない小さなケーキをサービスしていただいたことは、とても心が温まった思い出です。
さまざまな街で作業をしてきた私ですが、その数だけ出会う人々の親切に触れているような気もします。
もちろんお店の入り口や壁紙、Googleマップで口コミをチェックしながらパソコン作業が邪魔にならないかの事前準備も必須です。
どうしてもここで作業をしたいけれどなんとなく雰囲気が読めないな、という場所ではメモ帳へのアナログ描きか、スマートフォンでの作業をおすすめしますよ。
場所や方法はとっても自由。ただ逃げてしまえばいい。
このように色んな場所に逃避行することでさまざまな締め切りを乗り越えてきた私ですが、悩める皆様も是非一度旅に出かけて文字を書く、をやってみてくださいね。
日本ならば、夜行列車や飛行機などが個人的にはおすすめです。移動時間だけでは完成しなかったという時には、降り立ったその街中を散歩して公園のベンチでもカフェでも続きを書いてみてください!
どこでもいつでも文字をかける、がライターという仕事の最大の利点だと思っています。
締め切りを前倒しした後の知らない街でのコーヒーは、きっと特別な一杯になるはずですよ。
この記事を書いたライター
A
猫と文学と二次元アイドルを愛す、自他共に認める現代の魔女。自身のエッセイや旅行記を中心に執筆活動をし、web雑誌の編集長も務める。
エッセイ、アート関連の紹介記事やインタビュー記事などが得意分野。苦しみながらも書かねば生きていけな...