アクセス数を稼ぐのはライターの力量とは限らない?
いろいろな材料を使って記事を仕上げるのは料理と同じだが…
────さて、今回はPV(ページ閲覧数)が増える記事とは何かというテーマなわけですが
ライターとしては嫌な話題ですよ。
PVなんてライターの力量で決まるのかなって疑問に思いますし、単純にPV稼げばいいってものではなく、読み始めたらヤッパつまんないってすぐに出ていかれては意味がないわけです。
だからなるべく読んでもらえそうな構成を考えて、最初のページだけチョイ読みで出ていってしまう「直帰率」は減らそうとするわけなんですが、クライアント(メディアの編集部)からはPVしか示されない事も多く、ホントに読んでもらえたのかわかりませんし。
────PVだけ稼げればってわけじゃないんですね?
ええ、その記事のPVってほとんどは「タイトル」と一緒に表示される「アイキャッチ画像」、SNSならそれらとともに表示されるリード文(簡単な解説)で決まると思ってます。
それで興味がわいて記事に来てもらえればPVになるわけですが、このタイトルや画像などは、必ずしもライターが決めるわけではありません。
一応ライターも記事にタイトルはつけますが、Google検索なんかで上位に来るためのSEO(検索エンジン最適化)を考慮したタイトルに編集部が改変、場合によってはライターが伝えたいこととは全然違うタイトルや画像になることも多いんです。
だからタイトルと内容が違うとか、アイキャッチ画像が間違っていてSNSのコメント欄が炎上してると、ライターとしては無力感を感じることも多いんですが、とにかくそれでPV稼げるんだと言われれば、首を傾げつつも文句は言えませんし。
だけどそこはライターとしてはどうしようもない部分ですから、理由はどうあれ記事を読んでくれた読者の方が、少しでも納得して読み進めてくれる記事になるよう、がんばるしかありません。
また、PV数という意味ではもっと根っこの問題…たとえば「テーマ選び」がまず重要ですね。
テーマに対し、ライターがどう向き合うべきかで読者の反応は変わる
電気自動車についての記事も今は風当たりが強いものの、読者に考えてもらうのが大事
────テーマの選択はライター側ですか、編集部側ですか?
どっちもあって、編集部からとにかくこのテーマで書いてくれという事もあれば、ライター側から企画提案したテーマを採用してもらう事もあります。
もちろんライターが自分で提案したテーマの方が書きやすいんですが、編集部から依頼されたテーマも、実はライターなりの解釈で意図や方向性はいかようにでも改変できますから、そこはライターの腕の見せどころです。
話題になっているからとヘイト系のテーマを依頼されることもありますし、何しろ話題になるくらいですからPVは伸びますが、記事の内容までヘイト系にする必要はないと思ってます。
「こういう話題で盛り上がってますが、こういう解釈はいかがでしょう?」と、読者の皆さんに語りかけるような形にするのが、私は好きですね。
────具体的には、どういう話題が熱く好まれるのでしょう?
そりゃもう国や政府の政策、自動車関連だと、新規登録から13年を超えた車は自動車税が高くなる重課税が、「旧車イジメだ!」とやり玉に上がるんですが、読者の皆さんはそれに共感して、国を批判する記事を期待するとします。
でも、私としては「趣味で乗る旧車は贅沢品だし、ヨーロッパみたいに税金が安い代わりに文化財扱いでコンディション維持に多額の費用を要したり、古い車に通行税を課したり乗り入れ禁止な地域もない日本は、まだ恵まれてますよね?」と書くわけです。
そうなると、期待を裏切られた方はSNSなどのコメント欄で「この裏切り者!」とばかりに反論を叩きつけてきますが、私に共感して「よくぞ言ってくれた!」と言ってくれる人もいます。
まあ「炎上」と言っていいくらい荒れますが、とにかく読んでいただいてるのがわかりやすいですし、私は多数派というか、声のデカイ人に合わせる必要性も感じてませんから、あとは自由に考えてくださいと。
技術大国、ものづくり大国で自動車王国ニッポンというプライドをお持ちの皆さんにとっては、とにかく新興勢力の製品なんて認めたくない!という人が多いんです。
でも、日本車だって戦後復興期から高度経済成長期あたりまでは「敗戦国の製品なんて安いだけでロクなもんじゃない」と言われた時期があり、新興勢力の車はある意味、日本車と同じ道を歩んで登ってくる後輩だと思えば、過去の日本を否定するようでオカシイなと。
だから私は新興勢力の車も日本車や他の国の車と全く同列に扱うので、面白くないと感じる人も多いでしょうが、その中で「ちょっと待てよ」と立ち止まって考えてくれる人がいれば、それでいいと思ってます。
最近は電気自動車に対する風当たりも強いですが、同じ調子で記事を書いていますね。
────編集部や読者の期待に対し、逆張りを狙っているようにも思えますが。
否定はしません(笑)。
もちろん自分の信念と異なることは書きませんから、私自身が逆張り上等、「うんうんそうだねー、アナタが正しいよ。」と簡単には言わず、「ちょっと待って、こういう考え方はできないか?」って議論に持ち込んじゃうヒネくれ者、ということだと思います。
たいていの組織では、何となく穏当に、早く話をまとめて切り上げたい傾向にありますから、私みたいに波風立てちゃうタイプは嫌われ者でして、だからこそフリーランスのライターをやってるとも言えますね。
だけど、記事を書く時にも「うんうんそうだねー」でやってしまうと、「やっぱそうですよね!」で話が終わってしまいますし、ヨソの記事と同じこと書いても、「どこを切っても同じ絵が出てくる金太郎飴」ですから、それこそAIに任せてよいのでは?
私は専門ではないのでSEO的に正解かはわかりませんが、今はGoogleで検索する人が昔ほどにはいない印象ですし、SNSのタイムラインやYahoo!ニュースなどから記事に入る読者が増えているでしょうから、正直SEOで検索上位というのはあまり意識していません。
それよりは、「間違いや少数派になることはあるかもしれないけど、ウソはつかずに堂々と意見を述べる」のを、私は大事にしています。
たまに他のメディアで私と同じ論調の記事を見かけると、むしろ自分が後追いになっていないか気になるくらいで、どうせなら後追いされるような記事をいち早く書きたいですね。
PV数が伸びた意外な記事と、その理由
オートマの変速についての記事がたぶん筆者の最高PV…なぜ?
────最後に、兵藤さんがこれまでPV数を稼いだ記事で印象的なものを教えてください
もっともPV数を稼いだという意味で印象深いのは、「AT(オートマ)車で2速発進や2段飛ばしの変速はアリか」というテーマだったと思いますが…正直、書いていてこんなテーマ、需要あるの?と疑問に思ってました。
しかし、あれよあれよと他のテーマとは2桁くらい違うPVになりまして…全く意味がわからず困惑しましたね。
自分自身はAT車でも積極的に変速操作をするドライバーですが、面倒な時はしませんし、どっちでもいいじゃない、くらいに考えて肩ひじ張らずに書いた記事で、そんなに注目を浴びるほどなのかなと。
あるいは某巨大掲示板にリンクでも貼られたか、何か異常な要素がなければありえないPV数で、最後まで伸びた理由はわかりませんでしたが、そういう記事もあります。
────明らかにPV数が伸びた理由がわかる記事だと?
そりゃもう下ネタに決まってます(笑)。
ホンダの「プレリュード」という2ドアクーペがあって、2代目はデートカーとして大ヒットした傑作車ですが、女の子を乗せる助手席のリクライニングレバーが右側(内側)についていて、運転席側から倒しやすいんですよ。…なんだかんだで下ネタ系のコンテンツが伸びるのは、今も昔も変わらないんだと思います(笑)。
────そんなのでPV伸びるのって、どうなんですかね?
「どんな理由でもPVが伸びればいいのか?」って意味では、ホントならもっと「ためになる記事」で伸びればいいんですけど、読む皆さんは「肩がこらない娯楽」を求めてる場合も多いようですし。
気合い入れた記事より、肩の力抜いた記事の方がPVが伸びるなんてよくある話ですし、「いい意味で期待を裏切られた」というか、「皆さんをちょっとクスッとさせて、その日のストレスをちょっといやせた」ってことで、素直に喜んでおけばいいと思います(笑)。
この記事を書いたライター
兵藤忠彦
失われた10年?30年?まあボチボチ気楽に生きましょうや!という1974年生まれの専業ライター。自動車関連が専門の中では珍しいダイハツ派で、過去に全日本ジムカーナへスポット参戦時はストーリアX4やリーザTR-ZZ、現在もソニカRSリミテッドが愛...