ライターとの出会いから仕事にするまで

ライターとの出会いから仕事にするまで

ーープロフィールを教えてください。

名古屋を拠点に「リマニ編集室」という屋号でフリーランスのライターとして活動しています。

「リマニ」はギリシャ語で“港”という意味で、「書いて伝える」ことでさまざまな出会いが行き来するきっかけを作りたいとの想いを込めて名づけました。

現在はライター・編集・企画コーディネーター・広報支援などの業務委託と、うつわのオンラインショップ「夕凪舎」を運営しています。

ライティングと出会ってからは7年目ですが、ライターの肩書きにこだわらずに、正社員や派遣社員×副業ライターのパラレルワークなどさまざまな働き方を模索してきました。

派遣社員×副業ライターとして地盤を固めたのち、「うつわのお店を作る」という目標を叶えるために、2024年からはフリーランスとして活動しています。

ライターになったきっかけは?

ーーライターになるまでの経緯を教えてください。

新卒で地元企業の画廊に勤務したのちに知人が経営するギャラリーの立ち上げに携わり、アシスタントとして広報やカフェ営業、イベント運営などをしていました。

事情があって仕事がなくなってしまい、地元に帰るときに「場所にとらわれずに働ける方法」としてWebライターという選択肢を友人に教えてもらったのがライターになったきっかけです。

子どもの頃から文章を書くのは好きだったし、大学で文学を学んでいたこともあって「自分にもできるかも」と思って、すぐにライター講座に申し込みました。真に受けてすぐに行動に移すところは自分の長所なのかもしれないですね

ーーライターになるために始めたことを教えてください。

ライター講座のあと、その講座を運営していた会社のインターンで3か月間学びました。SEOやポートフォリオの作り方、Googleドライブの使い方、WordPressなど何も知らなかったので、当時教えてもらったことにいまでも助けられています。

クラウドソーシングにも登録していましたが、初心者だったので安定的に高単価の仕事を得るのは難しく、IT企業のSEOライティングのアルバイトを1年間続けました。

このときの経験が、構成の作り方やペルソナ、CV(コンバージョン)など「読者にどんな行動を促したいか?」「なぜこの記事を制作するのか?」という視点を養うきっかけになりましたね。

ライターには在宅でできるメリットもありますが、駆け出しの頃に出社してフィードバックをいただける環境に身を置いたことは結果的に良かったかなと思います。

キャリアアップに悩む日々と新たに見つけた目標

キャリアアップに悩む日々と新たに見つけた目標

ーー課題に感じていたことはありますか?

アルバイトのSEOライティングだけではポートフォリオに載せられる記名記事の実績が増えないことと、文章を書ける人がたくさんいる中での差別化が難しいことが課題だと感じていました。

そこで「書いて伝える」を軸にキャリアアップするため、中小企業の広報・Webプランナーの正社員に転職したんです。事業会社でオウンドメディアのディレクションや編集、SNS運用を担当しました。とにかく1度でも実務経験に飛び込むと、転職や案件獲得のときにPRしやすくなるのではと思います。

インターンで強みを掛け合わせることが大事だと教えてもらったことを思い出して、Webデザインのスクールにも行き、画像加工やコーディングなども学びました。

自分はどちらかと言うとひとつのことを深めていくスペシャリストよりも、横に広げていくのが得意なジェネラリストなので、できることを増やして小回りが効く人になることを目指しています。

Webのスキルを広げたことで、ギャラリーにいた頃から描いていた「うつわのお店をやりたい」という漠然とした夢が、「まずはオンラインショップで小さく始めよう」と具体的な計画へと変わったことは転機になりましたね。

それがきっかけで、雑貨メーカーのEC事業部に再転職しました。当時はライターという肩書きではなかったのですが、メルマガや商品ページの制作などで書くスキルは活かせるし、Webデザインスクールで得た学びも実務で役立てることができました。

ーーなぜ正社員からフリーランスのライターになったんでしょうか?

体調を崩してしまい、仕事と家庭との両立が難しくなったときに働き方を見直すことにしました。

「自分はなぜこの仕事をするのか?」

「この仕事を続けた先になにがあるのか?」

「体を壊してまで続けたい仕事なのか?」

自分が本当にやりたいこととできることは何かを考えた結果、「このままではうつわのお店をやることはできない」「家族と健康に過ごす時間を大事にしたい」と思って退職を決意。

会社員の安定を手放すのは勇気がいりましたが、ストレスから解放されて体調も落ち着いたので自分にとっては良い選択だったと思います。背中を押してくれた家族にも感謝しています。

そこから広報やネットショップなど今後に活かせる仕事をしながら、副業ライターとしてクラウドソーシングを再開することにしました。

ライターとして再始動。転機は人とのつながりから

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ーーライターとして仕事の幅を広げるために何をしましたか?

クラウドソーシングを再開して継続案件もいくつかいただきましたが、いつ契約が終わるともしれない不安や、手数料の負担、営業をかけ続けなければいけない現実にも直面しました。ライターは比較的参入ハードルが低いので、新しいライバルもどんどん増えていきます。

そんなとき、クリエイター交流会で出会った人たちが「自分の作品」を持参しているのを見て、「自分の看板」と呼べるものが何もないことに気づいたんです。スキルを増やしたつもりではいたけれど、ただの器用貧乏になってはいけないなと思いました。

まずはわかりやすい「自分の看板」となる実績を増やそうと考えて、少ない記名記事をかき集めてポートフォリオを整え、記名記事の案件に応募しました。

さらに、起業塾やライター交流会に参加したり、地域プロジェクトに関わったりしてリアルな場での出会いの機会も増やすようにしましたね。その場でいきなり仕事につながることは少ないですが、紹介から仕事のご縁が生まれることもありました。

「地域」「文化」に関心があるので、地元メディアで編集に携わったり、文化イベントの企画コーディネーターを始めたりするなど、コラムを書くことだけにこだわらずに領域を広げたことは現在にもつながっています

ーーライターとしての転機は?

あるとき、私が書いた文章を読んで「もっと描写力をつけた方がいい」と言ってくれた知人がいて、改めて文章を学び直そうとインタビューライター講座と合宿に参加しました

SEOライティングでは情報をまとめる文章を書くことに慣れていましたが、もっと温度感の伝わる文章を書けるようになりたいですね。自分の弱点に対して気づきをくれる人が周りにいることはとてもありがたいなと思います

元々人見知りなのですが、そんなことを言っていても始まらないので「とにかく1年はがむしゃらに外に向けて動く」ことを意識して行動しようと決めました。

実際に動いてみたら「自分にはできないかも」と思っていたことも意外とすんなりできたりして、自分から動いたことで見える景色が変わるという経験が自信にもなりました。

この1年はチャレンジングな日々でしたが、自分次第で仕事を面白くできる可能性と、人とのつながりのありがたみをひしひしと感じましたね。

ありがたいことに、出会った方々の紹介でWebサイトやパンフレット制作、インタビュー取材などのお仕事をいただくようになり、フリーランスとして独立して今に至ります。

ーーライターになってよかったこと・大変なことは何ですか?

取材の機会が増えるにつれて、自分個人ではお会いできない方のお話を聞かせてもらえることは、ライターの醍醐味だと感じています。今後は企画から携わる取材も増やしていきたいです。

また、仲良くなった方から取材依頼のご連絡をいただいたり、プレスリリースやクラウドファンディングのお手伝いをして恩返しができるときもうれしいですね。

大変なことは、スケジュールと体調の管理です。時間の融通がきくのは良い点ですが、集中しているとつい遅くまで作業して睡眠時間を削ってしまうことがあるので、無理なく長く続けられるライフスタイルを追求していきたいです。

時間と体力は有限なので、やりたいことがたくさんある中でどうやってリソースを割り振っていくかは悩みどころですね。

ーーこれからの目標を教えてください。

「ライティング」との出会いは自分らしく働き、生きていくための選択肢を広げてくれました。

私にとって「ライター」は自分が携わる仕事のひとつであり、ゴールではないと思っています。ライターも含めたさまざまな活動をしなやかに行き来しながら、自分らしい生き方や家族とともに健康に暮らせる方法を模索していきたいです。

今年、ようやくうつわのオンラインショップをオープンしましたが、二足の草鞋を両立するにはまだまだ力不足だと痛感しています。もちろん大変なことや不安定なことはありますが、それも含めて自分らしく働けることには充実感も感じています。

いまの目標は、リアルな「場」としてのお店と、「書いて伝える」ことの活動を両立しながら生きていくこと。そのためにロールモデルとしている憧れの人は何人かいますが、最終的には自分らしい人生の舵取りができるようになることが目標ですね。

この記事を書いたライター

執筆者

イトウユキコ

愛知県名古屋市出身・在住。ギャラリー運営や企業広報を経て、ライター・編集・企画プランナーとして活動中。地域の文化や産業など街の文脈を伝える人。うつわのオンラインショップを運営中。いつかお茶とうつわが楽しめる場所をつくりたい。

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