本当のことを伝えたい

本当のことを伝えたい

ーーライターを目指すきっかけを教えてください

元々小学生の頃から作文が好きだったことがベースにあります。今でもそうなのですが、話すのが苦手で、書くほうが自分の気持ちを表現するのに楽だったんです。

ライターを目指すきっかけになった出来事があります。中学2年生の時に、食事中に窒息した祖母を弟と助けたことがあり、そのことが九死に一生をテーマとしたTV番組で放映されたことがあるのです。本当は出演したくなかったのですが(笑)、半ば押し切られる形で収録にいたった経緯もあり、放映日に再現VTRを見て二重のショックを受けました。

ーーそれはなぜですか?

途中、笑いの要素が盛り込まれていたからです。今思えば、番組的にそのようなシーンが必要だったのね、と飲み込めますが、中学生の私にとってはトラウマになるほどの壮絶な出来事でした。

スタジオで笑いが起きた時、「事実は目的のために変えられてしまうのか。私は本当のことを伝えられる人になりたいな」と素直に思いました。

このことがきっかけで、初めてライターという職業を意識したように思います。

ーーその後、どのようにライターに挑戦したのですか?

大学を中退し、一度はイベント会社の正社員として働きましたが、心の奥で眠っていたライターへの想いがふつふつと湧きあがってきました。

思い切って退職し、定時ちょうどであがれる派遣社員として働きながら、就業後に編集・ライター養成講座をオフラインで受講しました。かれこれ20年位前の話なので、卒業後は主に紙媒体のライターを募集していた出版社や編集プロダクションに応募し続けた感じです。

ですが現実は厳しく、面接にこぎつけるまでも大変で早々に挫折したというのが正直なところです。業界と何かしらつながりがないと厳しいと無理やり自分を納得させ、その後は職を転々としました。

一度諦めたライターに再び挑戦

一度諦めたライターに再び挑戦

ーー20年の時を経て再びライターを目指したのはなぜですか?

子どもが小学校に入学するのがきっかけです。適切なサポートを必要とする子だったため、外で働きながら療育に通ったり、通院したりする日々に限界を感じました。急に仕事を休んだり早退したりすることが自分の中でしんどくなってしまったんです。

「自分のペースで家でできる仕事に切り替えたい」そう思った時に、ピンときたのがライターでした。たしか、子どもが年中の時です。

ーーなるほど。20年前と今ではだいぶライターの仕事の幅も変わってきていますよね

そうなんです。だからこそ改めて挑戦してみようという気持ちになれたのだと思います。ネット中心の社会になり、Webライターの仕事がぐっと増えていました。紙媒体ではなく、Web媒体だったら需要があるかも、と単純に考えたんです。

右も左もわからない状態でしたが、「Webライターになるには」といった類の本を読み、書かれていた通りに動いてみたり、クラウドソーシングに応募したり、SNSを通じて企業に直接応募したりと、やれることはとにかくやってきた感じです。

どんなロードマップ本やWeb記事を読んでも自分に合っているとは限らないので、「とにかくやってみる。だめだったら次」という小さな積み重ねをしてきました。

ーーゼロの状態から受注するまで具体的にどのように取り組みましたか?

子どもが小学校に上がる頃にはライターとして少しでも稼げる状態でありたいと考え、年長の頃にはパートを辞め、その準備に入りました。

小学校から帰ってきた時に、できる限り家で「お帰りなさい」といってあげたかったことが当時のモチベーションでした。

図書館に行き、ネットで薦められていた本で、もう一度文章の書き方やコピーライティングなどについて学び直しました。

ですが、インプットばかりでは自分が今どういう状態かわからないため、同時にクラウドソーシングで実績を積もうと思い、いろいろ応募してみました。しかし、なかなか受注には至らず焦りましたね。

ーーそこをどのように乗り切りましたか?

「止めさえしなければ、機会は絶対にある。少しずつでも実績を積めば結果は後からついてくる」と言い聞かせながら、ただ自分ができることをやりました。応募してダメだったら、なぜ駄目だったか自分なりに分析して、次に活かす、その繰り返しでした。

家族の存在も大きかったですね。応援してくれることが本当に有難かったです。

新人ライターとしての歩み

新人ライターとしての歩み

ーークラウドソーシングで初めて受注した案件はなんでしたか?

インテリアを紹介するセールスライティングでした。媒体のレギュレーションやマニュアルが膨大で、それらを把握することにかなりの時間を要しました。一工程ずつオンラインでディレクターと確認しながら進行していくので想像以上に時間がかかり、ペースを掴めず大変でした。

ルールの把握や情報収集に時間がかかり、進行にも時間がかかる。膨大な時間を使った初仕事の報酬額は、クラウドソーシングの手数料も引かれているために少なく、やめればいいのに時給に換算して悲しくなったのを覚えています(笑)。

ーーその後はどうしましたか?

仕事の内容もしっくりこなかったので継続せず、その後は2年ほど企業や店舗のWebサイトでサービスや商品を紹介するSEO記事の執筆をメインに行ってきました。文字単価が安かったため、ひたすら書いても収入が上がらずに疲弊しましたが、この期間はとにかく量をこなす、知見を広める期間だと割り切りがんばりました

業界を問わず、さまざまな分野のサービスについて書けたこと、年単位での実績が作れたことはよかった点です。

2年ほど経った時には、次の段階に進みたいと思うようになりました。

ーーそれはなぜでしょう?

フィードバックがなく、自分が成長できているかわからなかったこと。そろそろ収入をアップさせたいと思うようになったからです。

フリーランスは基本1人で働くため、その時々でフィードバックが得られないのが辛いところかもしれません。自分からフィードバックがほしい、こういう場合はどうすればいいかなど、自ら聞くように努めていたところ、ライターに定期的にフィードバックを行うシステムを導入してくれた提携先もありました。

また、提供された情報から記事を書くよりも、自分で取材して書いた方がより良いものが書ける、人と話すことに苦手意識を持っているからこそ挑戦して、成長したいとも思うようになりました。そこで取材ライターに特化したいという考えに至ったんです。

スモールステップで取材ライターに

スモールステップで取材ライターに

ーー取材経験はあったのでしょうか?

はい。以前の勤め先のプロジェクトで、地域の飲食店を取材して記事を書くことを任せてもらったことがあります。今思い起こすと、当時は取材の仕方や文章もなっておらず、恥ずかしいのですが...。

思い起こせば、これまで仕事を転々としたなか、文章を書く機会があれば、事務スタッフであっても積極的に手を挙げてきたように思います。心のどこかでずっとやりたかったんですね(笑)。

例えば、暑中お見舞いのハガキの文面作成でさえも「私が案をつくります!」と言い、一般的なバージョンと攻めたバージョンの2パターンを上司に提案したことがあります。

ーーちなみにどちらが採用されたのですか?

攻めた方です(笑)。

ーーフリーライターは文章力も必要ですが、仕事を獲得するために提案力も必要とされますよね。取材の案件はどのように獲得したのですか?

きちんとした実績がないのでなかなか苦労しましたが、応募する際に、「この案件には私のこの能力が役立ちます」「こんなふうに取り組みます」と具体的かつ簡潔にアピールするようにしたら、機会をいただけることが格段に増えました。

最初はクラウドソーシングで受注したインタビュー音源の記事化の仕事から始まり、直近では、求人やサステナビリティを扱う媒体の取材ライティングを任されるようになりました。

本当に私にとっては大きな前進で、大変な部分も多いのですが、とにかく今は仕事を任せてもらえるのが嬉しいです。

ーー大変な部分とは?

やはり取材前の準備でしょうか。まだ慣れていないため、大枠を想定した上でインタビュイーをはじめとした業界や企業の情報収集、質問案の考案は慎重に進めています。わからないことは事前にディレクターに相談、確認するように努めています

取材当日も、臨機応変に対応していく部分も求められるため、決められた時間の中で、できる限りコアなお話を伺えるように意識しています。

ライターとしてのこれから

ライターとしてのこれから

ーーsumesisiさんの目標を教えてください

実はライターの収入が低過ぎて、メンタルが削られた時に訪問事務の仕事を並行して始めたんです。気分転換の意味合いもあり、今でも週に1、2回ほど企業に出向いています。ライター業以外に収入が確保できることで精神面も安定し、ある程度運動不足も解消された気がします。

それがプラスに働き、新しいことにも取り組めるようになりました。ライティングだけでなく、撮影も自身で行えるように中古の一眼レフを購入し、カメラの勉強を始めました

今は、ライターの仕事だけにこだわらず、もっと柔軟に仕事の幅を広げられればいいなと思っています。そのためには、目の前の仕事に対して一生懸命取り組むことが大事だと改めて感じています。そうすることで、今の自分に必要なことが見えてくるし、こんなこともできるんじゃないかというアイデアも浮かんでくるからです。

当面は、AIでは表現できない、人の心に届く記事が書けるよう日々精進し、いつか紙媒体にも挑戦してみたいです。

この記事を書いたライター

執筆者

sumesisi

一度諦めたライター業に再挑戦することになったのは、小学校から帰ってくる子どもに、なるべく家で「おかえりなさい」が言いたかったから。現在は取材ライティングに力をいれており、自分でも写真が撮れるようにカメラを勉強中。家族に感謝しな...

詳細を見る

同じシリーズの記事を読む

タグ